研究課題/領域番号 |
26870152
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 達 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (80624759)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 都市計画史 / ル・コルビュジエ / イルデフォンソ・セルダ / ユルバニスム / 近代都市 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、欧米主要各国及び日本において、どのように成立し、発展してきたのか、それぞれの起源とその影響関係を明らかにしようとするものである。 平成26年度は、主に三つの調査を進めた。第一に、本研究全体の基盤となる「都市計画」概念の誕生期における各国の動向に関する包括的な調査であり、主に日本において幅広く資料収集と読み込みを進め、研究全体の見取り図を構築した。特にパトリック・ゲデスがフランスから地理学及び社会改良思想を受容し、都市計画展等によってその社会思想を拡散させていく過程を追うことで、都市計画概念の創成期における国家間の影響関係の一段階についての展望を得た。第二に、ル・コルビュジエが1917年にパリに移住する以前の活動に関する資料を収集し、1910年ごろから断続的に書いた『都市の建設』との関連で読み込むことにより、ル・コルビュジエがイギリスやドイツにおける都市計画概念を受容しつつ、異なる形でフランスに導入していった過程について考察を加えた。第三に、平成27年2月末からパリ及びバルセロナでの現地調査を実施し、フランス国立図書館やカタルーニャ工科大学バルセロナ建築学校図書館といった施設を中心に、フランス及びスペインの都市計画創成期に関する資料収集を行った。特にバルセロナにおいてイルデフォンソ・セルダに関して、既知の資料以外の最新文献を多く入手することができたことは、予想外の大きな前進となった。フランスでは、ティエリー・パコやマルセル・ロンカイヨロらの書籍、ル・コルビュジエについての資料などを入手した。 平成26年度は、研究全体の道筋をつかむための重要な文献を、多く入手することが出来た。次年度は、さらなる資料収集と文献の読み込み、および資料整理を継続的に行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、日本、フランス、スペインという三つの国において、幅広く資料を収集することができた。特に海外での現地調査においては、例えば平成27年2月に出版されたばかりの『ル・コルビュジエ-ウィリアム・リッター往復書簡1910-1955』など、事前に想定していなかった重要な文献を入手することができ、研究を進めるための新しい筋道が見出された。パリの国立美術史研究所附属図書館やバルセロナのカタルーニャ建築家協会図書館をはじめ、複数の図書館で文献調査を行ったことで、必要な文献の全体像についておおむね把握することができた。また建築都市専門書店の関係者と直接情報交換を行ったことで、今後の資料収集に関して大きな協力を得ることができた。以上により、現在までの研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、引き続き資料収集、文献調査を行うとともに、対象年代と対象各国における相互関連年表を制作するなど、資料から集められた情報の整理を行う。特に1890年頃から1915年頃までのあいだに、ドイツ、イギリス、フランス、日本と相次いで「都市計画」の概念が言葉とともに誕生しており、研究の最重要対象年代をここに絞ることが出来そうである。 平成27年度前半はこれまで収集した資料の読み込みを行い、おそらく後半に再び海外現地調査を行う。調査国については今後の調査の状況に応じて、臨機応変に考えたいが、特にイギリス、ドイツでの資料収集が重要と考えている。また、ル・コルビュジエに関しては、本年が没後50周年ということで、いくつかの新しい資料や関連文献などが公開・出版される予定である。それら最新の情報と研究状況も踏まえつつ、研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ全額を使用している。ごく少額(2000円弱)の次年度使用額が生じているのは、単に端数が余ったためであり、それ以外の特段の理由はない。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究費は、主に海外の現地調査のための旅費及び図書資料の購入費に当てる予定である。渡航先は、文献調査の状況にもよるが、平成26年度にフランス、スペインでの調査を行ったため、イギリス、ドイツでの調査となる可能性が高い。なお、未使用額は2000円未満であり、書籍一冊程度に使用する。
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