本研究は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、欧米主要各国及び日本において「都市計画」の概念がどのように成立し発展してきたのか、それぞれの起源とその影響関係を明らかにしようとするものである。 最終年度にあたる平成29年度は、これまでの研究全体を整理しつつ、そのまとめに取り組んだ。特に研究上重要を思われるいくつかの点に焦点を絞り、その点を掘り下げて新しい事実を解明するとともに、「都市計画概念の複数の起源」という当初の問題提起に対する大きな流れを描きなおした。具体的には、第一に、フランスにおける「ユルバニスム」という概念が生まれていった経緯について、レオン・ジョスリーやアンリ・プロストの役割をもとに、定説以外の可能性も含めてあらためて整理した。第二に、ヴェルナー・ヘーゲマンとル・コルビュジエの活動の接点について詳細な検討を加え、日本建築学会大会にて発表を行った。第三に、パトリック・ゲデスの役割について、社会学との関連も含めて包括的な位置づけを行い、紀要論文を執筆した。第四に、関一、池田宏、片岡安らの活動を再整理し、日本の都市計画創成期の世界的な位置づけについて検討を加えた。特に関一について、ヨーロッパ留学時とその後の活動の関連を調査した。第五に、これまでの研究成果の概要を広く公開するため、東京大学の中島直人准教授への対談的なインタビューを行うというかたちで都市計画創成期の歴史を捉え直して語り、その内容を日本建築学会建築討論委員会が編集するウェブマガジンに公開した。 本研究は全体として、これまで明確になっていなかった都市計画創成期における概念伝播過程や各国間の影響関係について、多くの点を明らかにした。また、パトリック・ゲデス、ヴェルナー・ヘーゲマン、ル・コルビュジエといった国際的に活躍した人物について、都市計画史上の新たな位置づけを提示した。
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