研究課題/領域番号 |
26870153
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
知花 武佳 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10372400)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国内一級河川の類型化 / 地質 / 砂防堰堤の高さ / 礫径 |
研究実績の概要 |
申請時は日本列島を四つの類型に分類するとしていたが,初年度の研究より川の特徴(河相)によって15類型に分割することとし,各地域の代表的な河川で調査を行うこととした.今年度,これらの河川を詳細に検討した結果,類型を17類型とした方が良いことがわかった.この新しい類型に注目すれば,過去及び初年度に調査した河川が,①北部北上ー渡島帯の朱太川,②東北地方該当なし,③新潟北関東の渡良瀬川,④フォッサマグナの狩野川,⑤日本アルプスの富士川,⑥飛騨高原・加賀美濃山地の手取川,⑦丹波高原該当なし,⑧中国山地該当なし⑨三波川帯・秩父帯の多摩川,荒川,⑩四万十帯の多摩川であった.これに今年度は③の思川,④の相模川,⑦の菅生川,⑧の千代川で調査を実施した.これにより,最終年度に東北地方での調査が終われば,本州の代表的地域での調査結果をまとめることができる.これまでの結果,①,⑦,⑩のような巨礫を産出しにくい地域では,流下方向の粒径変化が乏しく,せいぜい5~10cmの間でしか変化が無い.一方,今年度調査した⑧の千代川や③の思川や④,⑤,⑥,⑨の類型に多い巨礫を産出する河川では,流下方向の変化が大きかった.こうした河川に砂防堰堤が多く入っているのは,③,④,⑤,⑥と山地の隆起の大きい日本の中央部に集中しているが,地質によって入り方が異なった.すなわち,火山岩では低落差の連続砂防堰堤が,花崗岩では高落差の砂防堰堤が距離をおいて設置される傾向にあった.これらの高さと堰堤下流の粒径との間に明確な関係が見られ,堰堤下流では,落差が低いほど大きな礫径がなくなり,高いほど小さな礫径のものがなくなっていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北地方主部を除き,本州部主要類型の河川すべてで調査を行えた.特に距離の遠い,丹波高原と中国山地で調査できたのは意義がある.また,巨礫の有無によって流下方向の変化が異なること,地質によって流路網や砂防堰堤の入り方に違いが見られたこと,とはいえ,同じ地質でも,地域によって大きな違いがあることを見いだした.また,初年度に砂防堰堤の影響について言及したものの,やや定性的な議論となっていたのに対し,今回の研究成果で堰の高さによって粒径に及ぼす影響が大きく異なることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度からの予定にあるとおり,東北地方主部の調査を最終年度に行いたい.これにより,北海道,九州及び本州の一部を除き,日本列島における河川の特徴の違いを,その粒度分布に注目してまとめることができる.また,砂防堰堤の入り方や,流下方向の粒径分布の変化,それらに地質が及ぼす影響など,これまで定性的な考察が残るものをより定量的な議論へと変化させていく.
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