全国の一級河川を踏査し,その川の状況を参考に日本列島を以下の領域に区分した.①北海道主部,②北部北上-渡島帯,③東北地方主部,④新潟北関東,⑤フォッサマグナ,⑥日本アルプス、⑦飛騨高原,加賀美濃山地,⑧美濃三河高原,⑨近畿トライアングル,⑩丹波高原,⑪領家変成帯,⑫中国山地,⑬和泉層群,⑭九州北部,⑮九州中部,⑯三波川変成帯・秩父帯,⑰四万十帯,⑱九州南部. この中でなるべく状況が異なるように,②の朱太川,④の渡良瀬川,思川,久慈川,那珂川⑤の相模川(本川及び中津川,道志川,秋山川)狩野川,酒匂川⑥の富士川支流(大武川・御勅使川),⑦の手取川,⑩の菅生川,⑫の千代川,⑯の荒川(本川及び入間川,越辺川,高麗川),⑰の多摩川(本川及び浅川)を対象とし,セグメントM,セグメント1,セグメント2-2の多数の場所で河床材料の粒度調査を実施した.こうして得られた代表粒径を平均年最大流量時の無次元掃流力と比較しつつその結果について分析した.その結果,類型による地質の差が,巨礫の有無,砂利の量,砂防堰堤の数に違いをもたらし,結果として粒度分布や土砂の移動頻度が大きく異なった.セグメントMとセグメント2-2とでは代表粒径が全く異なるにも関わらず,各セグメントにおいて大きい粒径成分を含む地点に限れば,その粒度分布形状はかなり類似していた.この分布形状は標準偏差が1.2の対数正規分布とほぼ一致し,空隙率がかなり小さい粒度分布といえる.一方セグメント1では類型や代表粒径に関わらず粒度分布形状がかなり類似していたが,その分布の標準偏差は比較的小さく,これはセグメント1のτ*が小さく河床材料が移動しにくいためと考えられる.以上から,粒度分布形状の特徴と,それが平均年最大流量時のτ*によってある程度説明できることを明らかにした.
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