研究課題/領域番号 |
26870155
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 敦子 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD) (40723820)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サンゴ骨格 / 窒素同位体比 / カリブ海 / 窒素固定 / 更新世 |
研究実績の概要 |
熱帯・亜熱帯の海洋表層において生態系を支えている窒素循環の収支を計算するモデルでは、窒素固定が主要な栄養塩窒素の供給源であると予想されているが、直接的証拠に乏しく、その実態は明らかになっていない。本研究では窒素固定に関する研究が進んでいる熱帯北大西洋に位置するカリブ海ケイマン諸島の造礁サンゴ骨格の窒素同位体比指標を用いて、現生および後期更新世温暖期の化石サンゴから各100年間の窒素固定量の変動を推定し、その値と周期的変化から窒素固定量の変化を支配する要因および温暖化地球における窒素固定量の変化を明らかにする。本年度はイギリス領ケイマン諸島において野外調査をおこない、化石サンゴ骨格を採取した。ケイマン諸島はカリブ海北西部に位置し、隆起サンゴ礁で形成され、沿岸には過去の海水面を示すサンゴ礁段丘が見られる。サンゴ骨格の採取はエンジンドリルを用いたボーリングとタガネを用いておこなった。サンゴ試料は現生試料と同じDiploria属を採取した。調査は現地の研究施設であるCentral Caribbean Marine Institute(アメリカ)とGEOMAR海洋研究所(ドイツ)との共同でおこなった。採取した化石サンゴ骨格試料はGEOMARにて岩石カッターで厚さ5 mmにスライスしたのち、北海道大学にて軟X線画像を撮影し、年輪の解析をおこなった。採取した試料は非常に保存が良く、現生試料と同じ手法で測定できることがが分かった。現在、採取したサンゴ骨格試料の年代測定とストロンチウム/カルシウム比をドイツでおこなっており、その後、窒素同位体比分析をおこなう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は計画通りに研究を遂行した。また昨年度の調査以降、現地で定期的に調査海域の海水試料を採取しており、その分析結果から現在の海洋の窒素同位体比の季節変動を推定することが可能である。よって、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
化石サンゴ骨格の窒素同位体比の100年間の経年変動を検出する。その後100年間のうちの最も温暖な5年間の季節変動を解析し、現在の海洋の窒素同位体比の季節変動と比較する。化石サンゴから復元された最温暖期の季節変動と100年間の窒素固定量の経年変動を現生サンゴの結果と比較し、現在および温暖期の窒素固定量の違いおよび窒素固定量を支配している要因を考察する。
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