本研究では、当研究室で確立したヒトiPS細胞からの三次元膵島形成系において、① 膵島前駆細胞から膵島様構造形成に至るまでのメカニズムを理解し、得られた知見を元にした系の再構築 ② ヒト膵島前駆細胞を無尽蔵に増やす系の開発を行い 、in vitroでのヒトiPS膵島形成効率を劇的に向上させることを目的として研究を行っている。当研究室の系では、iPS細胞から内分泌前駆細胞まで膵臓発生ステージを模倣した分化誘導を行う。この細胞を分散させたのちに分化支持細胞シート上に撒き直す。このことで機能的な膵島様構造が形成されることを確認している。しかし、この培養系でなぜ機能的な膵島形成ができるのか不明である。以上の事から、本誘導系における膵島形成過程を詳細に解析することで、in vitroにおける膵島の形成メカニズムを理解することを目的として研究を行ってきた。平成26年度はヒトiPS細胞由来の内分泌細胞が膵島系細胞に分化する過程の観察を行った。内分泌前駆細胞マーカー、内分泌細胞マーカー発現ベクターを組み込んだヒトiPS細胞を用いて実験を行った。本細胞を分化誘導することで内分泌前駆細胞を80%以上含む内分泌前駆細胞塊を作成することに成功した。内分泌前駆細胞塊が膵島系細胞に分化する過程をインキュベーター共焦点顕微鏡にて確認したところ、複数の内分泌前駆細胞が細胞塊内部で集合、凝集する様子が観察できた。この知見を元に、現在、本細胞塊を分散させ、細胞シート上に撒き直すことで膵島を形成する過程を観察する実験を行っている。また、分化フィーダー細胞中の膵島形成を支持する細胞種の同定を行うために、分化フィーダー細胞のシングルセルクローニングを行った。その結果、増殖能を維持する細胞が複数得られ、さらに本フィーダーを用いることで機能的な内分泌細胞を含む細胞塊が得られることがわかった。
|