研究実績の概要 |
関連諸領域の文献渉猟を、とりわけロマン主義時代を中心とする19世紀フランスの文学・社会思想に関連して行った。なかでも、ネオカトリシスムと反革命思想の検討に力を入れた。 ポール・ベニシュー『フランス・ロマン主義』の第二巻、『預言者の時代』の翻訳作業を継続するとともに、著者の知的生涯を跡付け、それが彼の19世紀理解とどのように響きあっているのかの検討を進めた。訳書および論考の公刊はいずれも2018年度になる見込みだが、成果の一端は、以下の報告において披瀝する機会を得た。「ポール・ベニシューと阿部良雄によるフランス・ロマン主義」、科学研究費補助金・基盤研究(C)「フランス第二帝政期の文学場と芸術美学」(研究代表者:菅谷憲興)、第8回研究会、立教大学、2018年2月16日。 また、事典項目「フランス・ロマン主義」を執筆し、英独のロマン主義との対比を念頭に、ヨーロッパ・ロマン主義のなかでのその位置づけを定義した(『社会思想史事典』社会思想史学会事典編集委員会編、丸善、2018年刊行予定)。 ヨーロッパ・ロマン主義の比較検討における重要な形象のひとりとしてスタンダールに注目し、研究を進めた。その成果の一端を米国の学術誌に投稿したが、これは査読を経て、2018年度に公刊が決定している("Stendhal et l’experience du miroir," MLN, Vol. 133, No. 4)。 欧州統合の行方が懐疑にさらされる状況下でのフランス政治について、論考を発表した(「予告された幻滅の記録――オランド政権の歴史的位置とマクロン政権の行方」、『世界』897号)。 加藤周一の研究を進め、その一端を雑誌に発表した(「加藤周一とフランス」、『ふらんす』92巻4~8号)。戦後日本を代表するこの知識人については、とりわけヨーロッパ諸思想との出会いに焦点を当てつつ、著作の執筆を予定している。
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