本年度は,トマト黄化えそウイルス (TSWV) がコードする各タンパク質の内,RNAポリメラーゼ(Lタンパク質),細胞間移行蛋白質(NSm),およびサイレンシングサプレッサータンパク質(NSs)に関して,大腸菌を用いた発現系の構築を行った.TSWVのLタンパク質は,330kDaと非常に巨大であり,全長では発現させることが不可能であった.そこで,Lタンパク質のORFを4分割し,それぞれの領域の発現を試みた.結果的に,いくつかの領域で発現が確認されたものの,いずれも不溶性画分に分画されてしまった.今後,さらに細かい領域に分割し,可溶性タンパク質として発現可能な領域を探索する必要がある.NSmタンパク質に関しては,35kDaと比較的小さいタンパク質であるため,全長で発現可能であると思われたが,残念ながら大部分が不溶性画分へと分画されてしまった.そのため,このNSmタンパク質についても,可溶性タンパク質として発現される領域を探索する必要がある.一方,NSsタンパク質に関しては,ヒスタグ・チオレドキシンタグを融合させることで,可溶性タンパク質として発現させることに成功した.その後,ニッケルレジンによる精製,ゲル濾過クロマトグラフィーによる精製にも成功し,純度の高いNSsタンパク質を大量に精製することが出来た.5mg/mLのタンパク質濃度で結晶化を試みたが,現在のところ,X線構造解析が可能な良質の結晶は得られていない.今後,精製条件や結晶化条件の詳細な検討を行う必要がある.
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