研究実績の概要 |
口腔扁平苔癬(OLP)は、口腔粘膜の角化異常を伴う難治性の慢性炎症性疾患である。原因は未だに不明で、発症のメカニズムとして遅延型アレルギーに類似した細胞性免疫応答の関与が指摘されている。未知の抗原を認識した樹状細胞によりT細胞が感作され、IL-6,IL-1,INF-γ,TNF-αなどのサイトカインやケモカインの産生が誘導される。そしてこれら液性因子により上皮下へのCD4およびCD8T細胞の浸潤が惹起され、上皮基底細胞に対する細胞傷害と変性を生じることにより病態が形成されると考えられている。よって、病理組織学所見として上皮下に帯状のT細胞の浸潤を認める。これらT細胞の免疫応答は、抗原と抗原提示細胞の性状、特に細胞表面に発現される共刺激分子の発現と産生されるサイトカインによって大きく左右される。 口腔扁平苔癬において、上皮下および上皮内に浸潤しているCD3陽性T細胞上にPD-1およびPD-L1の発現および基底細胞(Keratinocytes)上にPD-L1が発現していることを確認した。よって、口腔扁平苔癬における免疫応答にPD-1-PD-L1の相互作用が関与していることが示唆された。口腔扁平苔癬は、その臨床像に基づいて網状型、丘疹型、斑状型、潰瘍型、萎縮型、水疱型の6つの臨床視診型に分類されるが、病態が混在する症例では6分類に細分するのが難しいため、現在は白色病変が主要な部分を占める白色型(white type)と紅色病変が主要な部分を占める紅色型(red type)の2分類が主流になりつつある。紅色型の方が、病理組織学的に上皮下のTリンパ球浸潤が強く、現在白色型と紅色型におけるPD-1およびPD-L1の発現量の違いについて検討を行っている。
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