研究課題
<具体的内容>好塩基球はアレルギー疾患誘導において重要な役割を果たす細胞の一つであるが、転写因子による好塩基球の機能制御に関してはほとんどわかってこなかった。そこで我々は、好塩基球の発現する転写因子を網羅的解析により同定し、その中でも重要と思われるものについてsiRNAを用いたノックダウン法による機能解析を行った。まず、我々はマイクロアレイやRT-PCR法を用い、好塩基球に発現する転写因子を網羅的に解析した。その結果、好塩基球はいくつかの転写因子を強く発現していることがわかったが、なかでも血球細胞の機能に深く関与することで知られるGATAファミリーの転写因子に注目したところ、GATA-1、 GATA-2を強く発現し、GATA-3をあまり発現していないことが明らかとなった。さらに、GATA-1をノックダウンするとIgE依存性のサイトカイン産生、脱顆粒の低下が見られた。これらの細胞ではIgE依存性の反応は低下するものの、その他の刺激(PMAおよびIonomycin)では反応性は低下せず、GATA-1は好塩基球のサイトカイン産生や脱顆粒自体の反応ではなく、IgE依存性の反応を抑制していることが示唆された。<意義> 好塩基球はアレルギー疾患誘導などにおいて重要な役割を果たすことがわかっているが、好塩基球の機能を制御する因子に関しては詳しくわかってこなかった。今回の研究において、好塩基球が機能を示すのに重要なIgEと抗原の反応に関与する転写因子の一つが明らかとなったことは非常に意義深い。<重要性> 今回の研究により、好塩基球の機能を制御する因子が明らかになった。このことは、アレルギー疾患における好塩基球をターゲットとした治療を考える上で非常に有用で重要性の高い知見であると考える。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画では、①好塩基球の転写因子の発現の解析、②転写因子の好塩基球における機能解析を行う予定であった。今回の研究では①転写因子の発現解析を行い、好塩基球の機能に影響を与える可能性があるものをいくつかピックアップし、②各転写因子について好塩基球における機能解析した。その結果、複数の転写因子においてこれまでに明らかになっていなかった機能を持つことを証明することができ、特にGATA-1ではIgE依存性の反応に重要であるという知見を得た。以上のことから、この計画は当初の計画以上に進展している。
我々は、好塩基球は抗原特異的IgE依存性に反応し、アレルギー疾患の諸症状に関与することを示してきた。好塩基球のIgE依存性の反応を制御する転写因子に関しては十分に知られていなかったが、今回の我々の研究によりGATA-1が好塩基球の機能、特にIgE依存性の反応に非常に重要な役割を果たすことが明らかになった。このことから好塩基球のGATA-1をターゲットとしたアレルギー疾患の治療が有効であることが示唆される。今後アレルギー疾患の治療としてのGATA-1の可能性を検討するためにはGATA-1による好塩基球の調節の詳細を明らかにする必要がある。GATA-1による遺伝子の転写を介した好塩基球の機能制御を明らかにする目的で、GATA-1を欠損した好塩基球のマイクロアレイ、転写制御の解析をする予定である。また、IL-3やTSLPといったサイトカインが好塩基球の機能に影響することが知られ、このようなサイトカインが好塩基球に作用した場合のGATA-1の転写因子の変化を検討する予定である。しかし、問題点として、好塩基球は非常に寿命が短く、適切な細胞株もないため、機能制御の解析を行うにはGATA-1の発現を欠損したマウスの入手が不可欠である。そこで我々はGATA-1欠損マウスの作製を行うことを検討している。
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Immunity
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http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/meneki/