本年度は、昨年度までに明らかにした点、すなわち1)1980年クーデタ軍事政府の憲法裁判所裁判官の任命への介入、2)憲法裁判所による違憲審査の棄却・却下件数の2014年頃までの大幅な増加、3)裁判官・検察官高等委員会(HSYK)における組織改革と政府の影響力の強化、をふまえつつ、主に国外において資料調査・収集、ならびにインタヴュー調査を実施した。 国外での調査は、6月にトルコで、11月にドイツ・イギリスで実施した。トルコ(イスタンブル・アンカラ・ディヤルバクル)・ドイツ(ベルリン)ではインタヴュー調査を行ったが、ドイツではフンボルト大学ベルリンにおける研究プロジェクトを訪問し、意見交換も実現した。イギリス(ロンドン)においては、資料調査・収集を実施した。また、これらの調査・分析の内容は、成果発表やディスカッションを通じて随時精査を行った。 これらを通じて、本年度明らかにした点は、以下の2つが挙げられる。1)憲法裁判所裁判官に対するEUならびにヨーロッパ法曹の影響は、形式的・法的な枠組みから判断されるよりも重大である。2)憲法裁判所は現政権と「民主化」に関して一致が多く見られたが、2015年現在においては不一致も目立っており、遡って「司法の独立性」の視点を再考する必要がある。 こうした点は、従来看過されてきた点であり、本年度の分析によってその重要性を指摘するに至った意味は大きいといえる。
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