・有害元素汚染レベル:成田、羽田、関西の主要3空港は、屋上堆積物のZn、Cd、In、Sb、Biのエンリッチメントファクター(EF)が40を超過する「きわめて強い汚染」が認められた。また、3空港すべての試料でIn、Cu、As、Mo、Sn、Pbは「強い汚染」または「汚染」から、「きわめて強い汚染」のレベルに達した。地方空港では、Cdは「きわめて強い汚染」、Cu、Zn、As、In、Sb、Bi、Pbは「汚染」から「強い汚染」であったが、屋上堆積物の重金属レベルは主要空港よりも低かった。屋上堆積物における重金属濃度は各空港の発着便数と有意な正の相関をもち、航空機運行の汚染への関与が示唆された。 ・鉛同位体比分析による汚染の解析:高レベルの汚染が確認された主要空港の試料では、屋上堆積物とターミナルビル前のバス停における道路脇粉塵で鉛同位体比に差異がみられた。したがって、汚染起源の違いによって鉛同位体比が異なると考えられ、有鉛航空燃料の関与など、引き続き、要因の解析を進める必要がある。 ・異なる起源との比較:空港の屋上堆積物は、非空港7地点の屋上堆積物と比べ、元素濃度は明らかに高かった。Li、Ni、Zn、Rb、Mo、In、Cs、Ba、Tlは共通して、Mn、Ni、As、Zn、Cd、Pbは一部を除き、非空港試料より有意に高濃度だった。したがって、航空機運行の影響の大小よって汚染レベルが異なること、汚染起源の違いの影響が示唆された。空港の屋上堆積物、空港のバス乗り場の道路脇粉塵、鉄道敷地脇の土壌試料で元素レベルを比べると、とくに大型空港で元素濃度は道路脇粉塵よりも屋上堆積物で高いこと、鉄道周辺と元素組成が異なることが明らかとされた。以上から、これまで環境化学分野で注目されなかった航空機起源の汚染が明確に存在し、自動車、鉄道など交通モードによって有害金属汚染の形態が異なることが示された。
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