研究課題/領域番号 |
26870181
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
加用 千裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50550183)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 木材消費 / 社会経済因子 / クラスター分析 / 判別分析 / パネルデータ分析 / OECD / BRIICS |
研究実績の概要 |
当該年度は、OECD加盟の33カ国(申請当初は全34カ国を対象とする計画であったが、分析の結果ルクセンブルグを外れ値と判断し除外することとした)およびBRIICSの6カ国の合計39カ国における1980年から2011年までの過去32年間を対象として、木材用途(製材、合板、木質ボード、紙・板紙、木質燃料)ごとにクラスター分析を実施し、対象各国を木材の低消費経路国および高消費経路国の2つの国グループに分類した。 また、林業経済学、環境経済学、統計学、木材産業に関する専門家・有識者との研究会を3回実施し、次年度の判別分析に必要となる、木材消費量に影響する可能性のある社会経済因子を検討した。 さらに、その因子の候補となる経済水準(1人当たりGDP)、人間開発指標(Human Development Index: HDI)、前年からの人口変化率、人口密度、都市化率(総人口に占める都市人口の比率)、森林率(国土面積に占める森林面積の比率)、時間トレンドの各種データを世界各国の政府関係機関および国際機関から収集し、次年度の分析に利用可能な形式に加工・整備した。 それらの社会経済因子を独立変数、用途ごとの1人当たり木材消費量を従属変数とするパネルデータ分析(パネルデータを用いた回帰分析)を行い、両者の関連性を考察し、収集した因子の有効性を検討した。 その結果、経済水準の上昇は、製材と木質燃料の消費量を増加させるが、合板、木質ボード、紙・板紙の消費量を飽和あるいは減少させる傾向があることが分かった。また、人口密度の増加や都市化率の上昇は、木材消費量の減少に寄与し、森林面積の増加は、木材消費量の増加に寄与することが明らかになった。これらの分析結果により、経済発展、人口分布、森林管理の状況は、木材消費量に影響する重要な社会経済因子であることが解明された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請当初は、クラスター分析によって対象各国を木材の低消費経路国グループおよび高消費経路国グループに分類することを当該年度の研究計画としていた。 しかし、実際は、クラスター分析を行った上で、次年度の判別分析に必要となる様々な社会経済因子を検討し、そのデータ収集の一部を完了した。 また、それらの社会経済因子を用いたパネルデータ分析を行い、木材消費量への影響度合いを考察し、選定した因子の有効性を確認できたこと、さらに、その研究成果が査読付き学術論文として受理・公表されたこと、等の理由により、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、判別分析によって木材の低消費経路国および高消費経路国の2つの国グループの違いを決定する社会経済因子を解明する。 具体的には、当該年度に引き続き専門家・有識者との研究会による議論を重ね、更なる社会経済因子の候補を決定し、データ収集・加工を行う。その社会経済因子を独立変数、2つの国グループを従属変数とする判別関数を構築する。その判別関数を用いて判別分析を行い、2つの国グループの判別に統計的有意に寄与している独立変数を考察することにより、木材消費経路の違いを決定している社会経済因子を明らかにする。 また、当該年度の研究成果によってパネルデータ分析も判別分析を補強する手法として有用であることが示唆されたため、今後パネルデータ分析も併用し分析を進めることとする。 さらに、低消費経路国に共通する因子の特徴を考察し、今後発展途上国が低消費型の経済発展を実現するためには、どのような社会経済現象に着目した方策を導入することが重要なのかを提案する。 それらの研究成果をまとめ、学術論文発表、学会・シンポジウム発表、公開行事への参加等により、研究成果を広く社会に発信する。
|