本研究では,耐熱金属材料の耐水蒸気酸化特性を向上させる母材集合組織の設計指導原理を確立するために,耐熱鋼の水蒸気酸化における酸化皮膜の組織形成に及ぼす母材結晶方位の影響を明らかにした。オーステナイト系耐熱鋼のモデル合金であるFe-Cr-Ni合金を用いて種々の高温酸化実験を行った。また,電子線後方散乱回折法を用いて,酸化前の試料表面における母材結晶方位を特定しておき,酸化後に同一表面の組織観察を行うことで,表面に生成する酸化皮膜の組織形態と母材結晶方位との関連性を明らかにした。(111)を有する結晶粒の表面では,内部酸化が起こりにくく,その直下に保護性酸化皮膜が生成しやすいことが明らかとなった。
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