研究課題/領域番号 |
26870187
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤山 淳 東京大学, 生産技術研究所, 研究員 (30580592)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 三重項-三重項消滅アップコンバージョン蛍光 / シリカナノ粒子 / 水素結合 / 超分子フィルム |
研究実績の概要 |
当該年度は既報にならい、増感分子と蛍光分子を封入した三重項-三重項消滅アップコンバージョン蛍光(TTA-UCL)を有するシリカナノ粒子を作製した。シリカナノ粒子作製にあたり、オルトケイ酸テトラエチルとジエトキシジメチルシランの配合割合、界面活性剤の種類、加熱方法などシリカナノ粒子の作製条件の最適化の検討を行った。作製したシリカナノ粒子を用いPCBM/P3HT系およびPCBM/MEH-PPV系の有機薄膜太陽電池を作製したが、電流・電圧特性がいずれの系においても高い抵抗値を示し、また、分光感度測定においても長波長成分にTTA-UCL由来のピークが観察されなかったことより、有機薄膜太陽電池内では作製したシリカナノ粒子がTTA-UCLを示していない事が示唆された。そこで、水系と有機溶媒系でのサイズ排除カラムクロマトグラフィーを用い解析したところ、シリカナノ粒子中の色素分子が有機溶媒に溶け出してしまっていることが明らかになった。また、走査型電子顕微鏡観察よりシリカナノ粒子の凝集が確認された。凝集したシリカなの粒子が絶縁体として作用しているため高い抵抗値を示したと考えられる。そこで、気体透過性の低い水素結合性超分子ネットワーク内に増感分子と蛍光分子を固定化する手法を開発した。この手法により、pn接合系に絶縁体構造体を導入せずにTTA-UCLフィルムを塗布することが可能となり、従来の方法より汎用性高いシステムになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TTA-UCL型シリカナノ粒子の有機半導体への混合が、有機溶媒への色素分子の溶解とシリカナノ粒子の凝集という問題を打開する必要がある。しかし、水素結合性超分子フィルムへの色素分子の固定化が成功しており、この手法はTTA-UCLをより汎用的に使用することができる、新規手法であり今後の研究の幅が拡がるため、現在の達成度をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2014年2月から研究代表者の所属研究機関が変更になった。現所属では有機薄膜電池作製の設備がないため、より汎用的にTTA-UCLを用いる事が可能なTTA-UCL超分子フィルムの構築を目指し、色素分子とフィルムの骨格分子の合成とその配合比の最適化を行い、より汎用性の高い超分子フィルムを作製する。最終的な有機薄膜太陽電池へ塗布実験は、前所属機関もしくは他研究機関との共同研究によって遂行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前所属機関では、試薬や備品などすでに研究機関で所有している物を使用したので、想定していたよりも支出を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、化合物の合成を効率よく行うため、自動フラッシュクロマトグラフィー精製装置などの装置を購入する。また、有機薄膜太陽電池への応用として、共同研究先への旅費として使用する予定である。
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