当該年度は、前年度に引き続きシリカナノ粒子中でのアップコンバージョン蛍光の研究を遂行した。前年度では、シリカナノ粒子同士が凝集の問題点があった。そこで、研究計画の中で示したブロックコポリマーのミクロ相分離構造を用いて三重項-三重項消滅アップコンバージョン蛍光(TTA-UCL)を有するシリカナノピラーを作製し、この問題点を解決しようと試みた。親水部位としてポリエチレングリコールを用いたブロックコポリマーでのシリカ作製では、形成されるシリカは粗な状態となるため、色素分子の漏れ出しを抑制することは困難であった。そこで、内部で密なシリカを形成させるために、親水部位として塩基である4-ビニルピリジンを用いたブロックコポリマーを合成した。本ポリマーのキャストフィルムは親水部位が規則正しく4-ビニルピリジンが配向したシリンダー型ミクロ相分離構造を形成していることが分かった。無機酸化物のナノスケールの鋳型として非常に有用な材料であり報告した。 また、気体透過性の低い水素結合性超分子フィルムを用いて、蛍光分子を固定化する手法を開発したが、側鎖のアルキル鎖のパッキングの強さから十分な柔軟性を確保できず、三重項消滅アップコンバージョン蛍光を起こすのに必要な運動性を確保することができず、三重項-三重項消滅アップコンバージョン蛍光(TTA-UCL)を確認することができなかった。
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