研究課題
マグネタイト(Fe3O4)はキュリー点が858Kと高く、室温においてもスピン偏極率が100%と予想されるハーフメタリック材料として、トンネル磁気抵抗素子などのスピン注入電極への応用が期待されてきた。しかしながら従来の薄膜作製技術では意図しない反強磁性的な構造欠陥や異相含むためバルク結晶と異なる磁気輸送特性を示し、また期待されている高スピン偏極率を有すFe3O4ヘテロ界面が得られていない。バルク結晶と同等の磁気輸送特性を示す高品質薄膜作製に注力し、CO/CO2ガスを用いて適切な酸素分圧下で後熱処理を施すことでFe価数・化学両論比の制御可能な高品質薄膜の作製し、薄膜中の構造欠陥における磁気構造について解析を行った。従来の真空蒸着法で作製されるas-grown薄膜では成長温度が300℃と低いためFe価数・化学両論比のずれに起因した反強磁性的構造欠陥が支配的であったのに対し、1100℃の後熱処理で作製したFe3O4(111)薄膜ではより明瞭な原子像が得られ構造欠陥の評価が可能となった。後熱処理を施したFe3O4エピタキシャル薄膜の断面走査型電子顕微鏡像により (111)面に沿った双晶境界が観察され、DFT計算により局所的な構造欠陥が導入されても磁気秩序はバルクと同様に保たれることが分かった。従って後熱処理により磁化率および磁気抵抗測定の観点だけでなく微細構造解析によってもas-grown薄膜における反強磁性的な構造欠陥が除去されることが示唆された。
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