研究課題/領域番号 |
26870190
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 孝太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30635123)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオン伝導体 / 結晶構造解析 / 粉末X線回折 / 粉末中性子回折 / 電気伝導度 |
研究実績の概要 |
本研究では、複数の構造型から成り新しい伝導経路を有する酸化物イオン伝導体材料の設計・創成を行うことを目的としている。特に2014年に発見した新規構造型に属する新酸化物イオン伝導体NdBaInO4は、ペロブスカイト構造ユニットとA希土構造ユニットが交互に積層した構造を有しており、これまでに報告のない構造であることから新しいイオン伝導体としての展開が期待される。平成26年度は、新構造型に属する新酸化物イオン伝導体NdBaInO4について、Ndの一部をアルカリ土類金属に置換した材料の合成・評価を進めた。Ndの一部をアルカリ土類金属に置換したNdBaInO4を合成し、酸化物イオン伝導度を測定したところ、そのイオン伝導度が20倍以上高くなることがわかった。その構造的要因を調べるために、放射光X線および中性子回折測定を行った。放射光X線回折測定は、SPring-8やKEK PFにおいて実施し、中性子回折測定は、豪州 ANSTOやJ-PARCにて実施した。その結果、アルカリ土類金属の置換によって、キャリアとなる酸素空孔が形成し、酸化物イオンの移動経路におけるボトルネックサイズが大きくなっていることが明らかとなった。これは、NdBaInO4におけるNd(三価)の一部をアルカリ土類金属(二価)に置換することで、価数の違いにより酸化物イオン伝導のキャリアとなる酸素空孔の形成し、Ndよりもサイズの大きいアルカリ土類金属を用いることで、ボトルネックサイズが大きくなったことから説明ができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり、複数の構造型からなる新構造物質NdBaInO4について、酸化物イオン伝導性を高めることに成功し、その構造的要因を明らかにしている。単にイオン伝導度を向上させただけではなく、構造的要因も明らかにしたことは、次の材料設計指針の重要な基盤となる情報となり、今後の材料開発への期待が出来る結果となっている。
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今後の研究の推進方策 |
NdBaInO4のさらなるイオン伝導度向上を目指し、異種の元素置換などを進める。平成26年度は、Ndサイトに異種の元素を一種類置換することでイオン伝導度の向上に成功した。構造解析で得られた情報に基づき、次の元素置換戦略を立て、より高いイオン伝導度をもつ材料の開発を進める。また、革新的な酸化物イオン伝導体の開発を目指し、さらに新しい複数の構造型からなる新材料の開発を進める。特に、NdBaInO4の開発時と同様、イオン半径に注目した材料設計により、これを遂行する予定である。
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