平成28年度は,太陽光を閉じ込める新しい太陽光キャビティの開発のために,昨年度までに開発していた誘電体多層膜の設計コードと,太陽光キャビティの設計コードの開発を引き続き行うとともに,従来よりもCr3+を高濃度コドープしたCr:Nd:YAG セラミックスレーザー媒質を作成した. 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は下記の3点にまとめることができる. (1)太陽追尾装置のプロトタイプ及び,1㎡級のフレネルレンズを搭載した新しい太陽光励起レーザーシステムの作成:従来の過剰な熱負荷を下げるため,1㎡級のフレネルレンズを搭載した,太陽光励起レーザーのための新しい太陽追尾装置を作成した.これにより,従来の4㎡級のフレネルレンズを搭載した装置と比べ,熱負荷を下げることにより,より本質的なレーザー開発が可能となった.更に,これまでにレーザー発振実績の無い,高濃度に Cr3+ がコドープされた,Cr:Nd:YAG セラミックスレーザー媒質を作成した.これにより,従来の装置では熱負荷が高く,熱破壊を起こしてしまっていた高濃度 Cr3+ コドープのレーザー媒質でのレーザー発振が期待できる. (2)誘電体多層膜の反射率計算コードの作成:任意の層数の誘電体多層膜の反射率を計算し,指定した波長域・入射角度で反射率を最大化するための最適化コードの開発を行った.また,複数の誘電体多層膜ミラーの組み合わせにより,指定した波長域で望む反射率を得るための最適化コードの作成も行った. (3)太陽光キャビティの設計コードの作成:内部で太陽光がどのように反射,屈折し,レーザー媒質へと吸収されるかを,一次集光系であるフレネルレンズを含んだ系において計算できるコードの開発を行った.特に,太陽光キャビティの内側の形状においては,レーザー媒質への吸収パワー密度とそれによる熱負荷を考慮し,非線形最適化を行って設計出来るようにした.
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