研究課題/領域番号 |
26870203
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
溝端 浩平 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (80586058)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 北極海 / 海面力学高度 / ボーフォート循環 / 海洋温暖化 / 衛星高度計 |
研究実績の概要 |
海氷に覆われた冬期北極海において、海氷下の海洋循環を明らかにするため、地球環境観測衛星ICESatおよびCryosat-2の高度計データから海面力学高度を算出した。特に2011年10月以降のCryosat-2の場合は、ICESatデータとは異なる準拠楕円体モデル・衛星姿勢を考慮し、なおかつ新規重力モデルを採用することで、高時間分解能(月平均)の海面力学高度を算出した。北極海で展開されているIce Thetherd Profilerによる水温塩分データから算出したステリック高との比較結果はR2=0.75となり、衛星高度計により海氷下の海面力学高度を得られることがわかった。これは従来、海氷の存在から観測が困難であった冬期の海洋循環場について、本研究の新たな手法が有用であることを意味する。 また、得られた力学高度場の時系列は、太平洋側北極海におけるボーフォート循環が、冬期の海氷下において拡大・縮小を繰り返す季節内変動を示した。またボーフォート循環の季節内変動の要因は、海洋の駆動源である海上風・海氷運動の変化にあることも明らかになった。 さらに、前述した海面力学高度とステリック高との比較を季節毎に分けると、冬期(1~3月)に相関係数が低下し(R2=0.52)、これは冬期のボーフォート循環が傾圧応答だけでなく、順圧応答していることを示唆している。 これらの結果から、①風により強化・弱化される海氷運動がボーフォート循環を拡大・縮小させること、②冬期ボーフォート循環は順圧応答・傾圧応答を示すこと、がわかった。 2014年9月にはカナダ砕氷船アムンゼンに乗船し、カナダ海盆を横断する測線上で水温塩分観測を実施した。現在、本研究で算出した力学高度データと比較検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、衛星高度計から海氷下の海面力学高度場を算出でき、特に海洋温暖化に寄与するとされているボーフォート循環の季節内変動とその変動要因を明らかにできた。また海洋観測についても、本来は海洋生物関連主体の観測計画であったが、航路等について船上で協議し、ボーフォート循環の断面観測を実施できた。アウトリーチとしては、European Space Agencyの衛星データを使用しているため、ヨーロッパ方面で研究計画等を紹介している雑誌にも取り上げられている。
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今後の研究の推進方策 |
ボーフォート循環の駆動源である海面応力の詳細を調査する。海面応力は、海氷運動を表す「氷速」・海氷の動きやすさを示す「密接度」・海氷と海面との間の摩擦係数を決定する「氷種および氷厚」の4つの海氷関連パラメータに依存するため、それぞれのボーフォート循環への寄与率は明らかにする。具体的には、「衛星搭載型マイクロ波放射計AMSR-E およびAMSR-2により得られる氷速・密接度・氷種」および「衛星搭載型高度計GLAS およびS IRAL - 2 により得られる氷厚」と、で得たボーフォート循環の規模・強度を比較し、各海氷関連パラメータのボーフォート循環の時空間変動に対する寄与率を求める統計解析を行う。 加えて、他機関の海氷海洋循環モデルの結果とも比較検証を行う。 研究計画に変更はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
英国雑誌掲載料における為替変動の影響で少額の残金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は極めて少額であるため、申請した使用計画に変更はない。
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