令和元年度には、研究中断前(2015年度)までに構築したパネルデータ(2008-2012)に2013-2016年のデータを加えてより長期間にわたるデータを構築した。またより頑健性の高い方法を用いた分析(以下に記述)を追加した。一方で都市部における農村出身者に対するサービスのコード化については、サービスが多岐に及び比較可能なコード化が困難であることから、都市部での農村出身者の環境について例等を使って記述するにとどめることにした。
追加分析は以下のとおりである。研究中断前には農村部から都市部へ移住した子供全体の平均値を農村部にとどまる子供や都市部の子供と比較する分析を行ったが、都市へ移住したことによる純粋な効果についてはまだ分かっていなかった。この点を探るため、子供レベルのFixed Effects Modelを推計した。このモデルを用いることで、例えば分析期間を通じ一貫して背が低い子が平均値を下げる効果を捨象し、居住地が農村から都市へ変わることに伴って起こる身体的発達度合いの低下(もしくは上昇)が起こったかについて検証できる。また農村に両親と残る子供は親がそもそも都市へ移住するという決断をしていないことから比較対象としてふさわしくないとの考慮から、両親が都市へ移住した子供のみで比較を行い、子供が親と共に移住したかどうかの効果に焦点を当てた。 この結果、身長・体重で測った身体的発達スピードは移住後の方が速まったということが分かった。この解釈として、(1)都市部における栄養状況が寄与しているのか、または(2)親と離れて農村で暮らす子供の身長・体重については都市部にいる親は正確に把握できていない(特に昔の値を覚えているため低めに回答された)かもしれないという二点が考えられる。こうした結果は学会発表を通じて発表され、ディスカッションペーパーとして公開予定である。
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