研究課題/領域番号 |
26870209
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
春日 健作 新潟大学, 研究推進機構超域学術院, 助教 (70547546)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Alzheimer's disease / Neuronal activity / Amyloid beta / Phosphorylated tau |
研究実績の概要 |
認知症患者は世界中で増加の一途をたどるが、認知症の最大の原因であるアルツハイマー病の予防・治療法として確立したものはいまだにない。アルツハイマー病は、病理学的にβアミロイド蛋白(以下Aβ)が神経細胞外に沈着した老人斑と、過剰にリン酸化されたタウ蛋白が神経細胞内に蓄積した神経原線維変化に特徴づけられる。 Aβは神経細胞の活動の亢進とともに細胞外に放出されることが報告されており、さらにAβは神経細胞の軸索終末から放出され、シナプス活動を障害することが示されている。本研究の目的は、神経活動依存性にシナプスを介した神経ネットワーク内のタウ蛋白の過剰リン酸化をひき起こす機序を明らかにし、アルツハイマー病の予防および新規治療法の確立への足がかかりをつかむことである。本研究では申請者が構築した共培養システム(ドナー細胞が分泌するAβが、培養液を介してレシピエント細胞へ及ぼす影響を解析可能である)を用いて、神経細胞の過活動がAβ産生亢進を介して、ネットワーク内の細胞におけるタウ蛋白リン酸化に及ぼす影響を探索する。 今年度は共培養細胞のドナー細胞の選択および神経活動亢進の条件設定を行う。マウス神経芽細胞腫(Neuro2a)およびラット初代培養神経細胞にグルタミン酸による刺激を行い、内在性AβもしくはトランスフェクションしたヒトAPP由来のAβの神経活動依存性の分泌亢進を確認する。その際、刺激に必要なグルタミン酸濃度、反応時間およびトランスフェクションAPPの有無に関し、詳細に検討を行う。 神経培養細胞のグルタミン酸刺激条件を検討次第、共培養システムを用いて神経活動依存性に分泌されたAβの細胞間での影響、特にタウ蛋白のリン酸化への影響を解析する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共培養システムのドナー細胞として用いる神経系培養細胞として、まずマウス神経芽細胞腫(Neuro2a)を用いた。グルタミン酸による刺激条件(濃度、刺激時間、培養液組成)を詳細に検討したが、内在性およびトランスフェクションしたヒトAPP由来のAβは、神経活動依存性の分泌亢進を認めなかった。グルタミン酸刺激の有効性はEgr-1により確認できたことから、Neuro2a細胞は神経活動依存性のAβ分泌の亢進を示さないと考えられた。 次にラット初代培養神経細胞で同様に検討を行ったところ、神経活動依存性のAPPプロセッシング亢進を確認できたことから、今後さらに詳細な条件検討を行う。 上記Neuro2a細胞は神経系培養細胞であるが、予想に反し神経活動依存性のAβを認めなかったため、条件設定などに時間を要し、本研究は当初の計画よりもやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
ラット初代培養神経細胞のグルタミン酸刺激によるAβ分泌条件を確認する。その後、ラット初代培養神経細胞をドナー細胞、Neuro2a細胞をレシピエント細胞として共培養を行う。Neuro2a細胞はグルタミン酸依存性Aβ分泌を示さないことを確認していることから、この共培養システムにおいてグルタミン酸刺激依存性に分泌されるAβはドナー細胞であるラット初代培養神経細胞由来と考えることができ、レシピエント細胞であるNeuro2a細胞におけるタウ蛋白のリン酸化を含め解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より進行が遅れたため、着手できていない予定実験があるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
マウス脳をもちいた初代神経培養実験等に使用する予定である。
|