研究課題/領域番号 |
26870214
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
三原 弘 富山大学, 大学病院, 診療助手 (00612623)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 消化管上皮 / 伸展刺激 / ATP放出 / TRPV4 / VNUT |
研究実績の概要 |
本研究では、1)胃及び結腸上皮細胞に、TRPV4イオンチャネル及びアデノシン三リン酸(ATP)を濾胞内に取り込む小胞型ヌクレオチド輸送体(VNUT)が発現し、2)伸展刺激によりTRPV4の活性化を介して、VNUTによって濾胞内に取り込まれていたATPがエキソサイトーシスによって放出されることを明らかにすることを目的としており、平成26年度は以下の結果を得た。 1.マウス・ヒトの胃及び結腸、および、胃・結腸上皮細胞株におけるTRPV4及びVNUTの遺伝子発現をRT-PCR法にて確認した。 2.免疫化学法、またはWestern blot法での上記細胞種におけるTRPV4及びVNUTタンパクの検出を試み、一部確認することができ、今後も実験を継続する予定である。なお、TRPV4欠損マウスの胃、結腸を用い、タンパク質発現の消失が確認された。以上の結果より、胃・結腸上皮細胞は伸展刺激によりTRPV4が活性化し、ATPをエキソサイトーシス機構により遊離できる可能性が示唆された。 3.マウスの胃上皮細胞及び結腸上皮細胞をカバーガラスに貼り付け、TRPV4活性化剤による細胞内Ca2+濃度上昇及び、電流応答を観察しえた。少なくともマウスの胃・結腸上皮には機能的にTRPV4が発現していることが確認された。ヒトの胃及び結腸上皮での検討は困難であった。 4.胃・結腸上皮細胞株に伸展刺激を加えたところ、有意なATP放出が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.遺伝子発現解析は予定通り遂行することができた。 2.タンパク発現解析は、一部遂行することができ、TRPV4欠損マウスの免疫染色を追加することができたが、終了することができなかった。 3.機能解析としては、マウスの胃上皮細胞及び結腸上皮細胞を用いた、Ca2+イメージング法、及び電気生理的解析を予定通り終えることができたが、細胞株を用いた検討は終了することができなかった。 4.ATP放出実験は、当初平成27年度に計画していたが、26年度中に伸展刺激機器の導入が可能となり、細胞株に伸展刺激を加えることができ、ATP放出が観察された。 このように、平成26年度に予定した実験のほとんどは遂行することができ、また、平成27年度に予定した実験の一部を遂行することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.タンパク発現解析を継続する予定であり、VNUT欠損マウスを作出した研究グループに組織提供の依頼をし、VNUT欠損マウスの胃、結腸でタンパクの発現が消失していることを確認する。 2.機能解析としては、細胞株を用いた検討を継続する。 3.ATP放出実験は、TRPV4活性化剤、伸展刺激によるATP放出が各種阻害剤、TRPV4もしくはVNUT siRNA、エキソサイトーシス阻害剤により減少もしくは消失するかを検討する。 以上の研究が順調に進めば、当初の予定通りマウス個体レベルの実験、機能性消化管障害患者での胃・結腸上皮でのTRPV4、VNUTの発現や内因性TRPV4活性化因子の定量化のために、当大学倫理審査委員会での審査を予定している。
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