研究課題
1、分解を誘導するUnstructured領域の特徴とUnstructured領域を標的にした分解制御どのような特徴を持ったUnstructured領域が分解を誘導するのか、特にそのアミノ酸配列に注目して研究を行った。その結果、アミノ酸残基の種類によらず、様々なアミノ酸を含む複雑な配列のUnstructured領域は分解を引き起こすが、単純な繰り返し配列を持つUnstructured領域は分解を引き起こさないことがわかった。この原理に基づいて様々な細胞内蛋白質の安定性を説明できることが明らかとなった(Fishbain, Inobe et al. Nature Struct Mol. Biol. 2015)。さらに分解を誘導するUnstructured領域に結合する分子により、分解を抑制することができることを明らかにした。Unstructured領域の化学修飾や小分子・抗体野結合などにより、Unstructured領域の物理化学的性質を変更させると、プロテアソームによる分解を抑制できた。この方法は特異的な蛋白質の分解を阻害する方法として高い将来性を有す。2,プロテアソームによる分解を誘導するアダプター蛋白質ユビキチン化されていない任意の蛋白質をプロテアソームに運び込むアダプター蛋白質の存在が最近明らかになってきた(Prakash, Inobe et al. Nature. Chem. Biol. 2009)。アダプター蛋白質はプロテアソームと基質蛋白質に同時に結合することができるため、基質をプロテアソームに運び込むことができる。そこで我々は、Unstructured領域をもつ不要な蛋白質をプロテアソームに運び込み、分解を誘導するアダプター蛋白質の開発を行った。特にハンチントン舞踏病などを引き起こすポリグルタミン蛋白質に対するアダプター蛋白質を設計し、その分解誘導効果を確認した。
2: おおむね順調に進展している
Unstructured領域に注目して、新規分解阻害方法と誘導方法の開発を行い、それらがin vitroのモデル系ではよく働くことを確認した。さらにこれらの方法の応用利用に取り組んでいる。
新規に開発を行っている分解阻害方法と誘導方法をもちいて、癌や神経変性疾患などの病気の治療を目指す。まずは癌及び神経変性疾患のモデル培養細胞を用いて、病因蛋白質の分解の誘導および阻害が可能であるか確認し、細胞レベルで疾患の改善が見られるか実験を行う。最終的には疾患モデルマウスにおいて、疾患治療効果があるか確認したい。
本年度は、新規分解制御方法開発の基盤的な研究を、既に利用している生化学的実験系で行った。この生化学的な実験系での実験は比較的コストがかからないため、次年度使用額が生じた。また研究計画初年度であるため成果が乏しく、積極的な学会発表を行えなかったことから、旅費も使用しなかった。
次年度は培養細胞などを用いた分子生物・細胞生物学的な実験が主となり、培地や実験キットなど多くの消耗品を購入する予定である。また積極的に学会発表も行う予定で、旅費も大幅に増加する見込みである。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Nature Struct. Mol. Biol.
巻: 22 ページ: 214-221
10.1038/nsmb.2958
Curr. Opin. Struct. Biol.
巻: 24 ページ: 156–164
10.1016/j.sbi.2014.02.002