研究課題/領域番号 |
26870217
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
友原 啓介 富山大学, 大学病院, 助教 (40711677)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒアルロン酸分解酵素 / 生薬 / 化学的直接誘導化 / 非特異的阻害剤 / 複雑系 |
研究実績の概要 |
1.効率的な生薬成分抽出法の開発 生薬抽出エキスの化学的直接誘導化は,新規天然物様化合物の最も直接的な合成法と言える.先行研究例では,反応系中での構成成分の分解や予期せぬ副反応等により反応系の更なる複雑化が生じ,生成物の単離・構造決定は困難を極めていた.本研究では,生薬抽出エキスの官能基選択的な化学的直接誘導化を行うことで,反応系の複雑化を回避し,新規天然物様化合物を一挙に創製することとした.別途選抜した基質(生薬抽出エキス)に対して,最適化したBucherer-Bergs反応条件下,直接誘導化を試みた.その結果,生薬エキス中に含まれる単純ケトンが反応し,複数の天然物様ヒダントイン誘導体(α-アミノ酸誘導体)を一挙に合成することが出来た.このとき反応は,生成物を容易に単離・構造決定するのに十分な程度で化学選択的に進行した.現在,他の反応系への適応可否を検討中である. 2.ヒアルロン酸分解酵素阻害剤の探索 ヒアルロン酸分解酵素阻害剤は,抗炎症剤や抗がん剤などの創薬ターゲットとして注目されている.既知阻害剤の中には,ヒアルロン酸(多糖)とは構造的に大きく異なる低分子阻害剤も多い.本研究では,これら低分子阻害剤の阻害様式を明らかとすることを目的として,酵素と阻害剤の新規分子間相互作用解析法を開発した.すなわち,最適化したin vitro 評価系に対しDMSOを添加すると,活性部位に対して非特異的相互作用を示す阻害剤は,DMSO濃度依存的に阻害活性が低下することを見出した.既知のヒアルロン酸分解酵素阻害剤について,Triton X-100添加条件下(既知法;Shoichet法)でアグリゲーションによる非特異的な阻害様式を示す阻害剤を排除した後,本手法(DMSO添加条件)を用いた検定を行ったところ,活性武威に対して非特異的相互作用を示す複数の阻害剤を検出することが出来た.現在,他の酵素阻害剤評価系への適応可否を検討中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
効率的な生薬成分抽出法の開発研究においては,天然物様化合物の新規創製法として生薬抽出エキスの化学的直接誘導化法を開発した.本研究では,基質を選抜し,反応条件及び精製過程を最適化し,多成分系のさらなる複雑化を回避することで,標的とする化合物群の化学選択的な誘導化が可能となった.また,目的とする誘導化体は,NMR,IRスペクトルにおける特徴的なシグナルを手がかりに容易に単離することが出来た.以上の研究成果は,下記に記載の学術論文として発表した. ヒアルロン酸分解酵素阻害剤の探索研究においては,酵素と阻害剤の分子間相互作用様式を評価する新手法を開発した.DMSOを添加したin vitro評価系において,DMSO濃度依存的に酵素阻害剤の阻害活性が低下することにより,非特異的阻害様式を示す阻害剤を検出できることを見出した. 以上の研究成果を平成27年度富山大学若手研究者等の学術交流・発表会にて発表し,最優秀賞を受賞した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度も,当初の計画通りに研究を進める予定である.さらに以下の課題についても検討し,本研究課題の目的達成を推進する. 1.生薬抽出エキスの化学的直接誘導化法の確立を目的として,多様な反応系において本手法の有効性を検討する.加えて,漢方方剤の科学的エビデンスを収集するための新手法としても研究を展開する. 2.DMSO添加条件下における分子間相互作用解析法の確立を目的として,複数の酵素阻害活性評価系における本手法の有効性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度も当初の研究計画通りに進めることが出来たが,主として物品費に次年度使用額が発生した.研究計画では,研究テーマの立ち上げ時に必要な予備実験等に時間と経費を使う予定であったが,想定よりも順調に進み,本実験に移行することが出来たため物品費の支出を抑えることが出来た.結果として,生薬成分の直接誘導化法の開発や,酵素と阻害剤の分子間相互作用解析研究を推進することができた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額について,当初の研究計画を遂行するために使用することに加え,本研究課題に着想を得て実施中の下記研究を推進するために使用する. 1.生薬抽出エキスの化学的直接誘導化法の確立と応用 2.酵素とその阻害剤の分子間相互作用解析手法の確立と応用
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