研究課題
慢性腎臓病(CKD)の進展に関する尿酸の影響について、健診コホートを用いた検討を行った。1998年から2007年までに健康診断を受診した対象者のうち、複数回腎機能が測定されており、血圧などの共変量の確認ができた者を対象とした。アウトカムの定義は 推算糸球体濾過量(eGFR) 60 ml/min/1.73 m2 以下とした。平均4年間の観察の結果、尿酸値 4-4.9 mg/dL の群と比較して、男性(41,632名)においては高尿酸血症(尿酸値 6mg/dL以上)の存在がCKD発症のリスク因子になることが、解析の結果明らかとなった。さらに、一年あたりの eGFR の変化についても検討を行ったところ、同様に尿酸値 6 mg/dL 以上の群で尿酸値 4-4.9 mg/dL の群と比較して eGFR の低下速度が有意に大きかった。女性についても同様の検討を行ったが、明らかな傾向は認めなかった。これまでに可能性が指摘されていたU字カーブ現象(尿酸が低値である場合にもリスクが上昇する現象)は認めなかった。研究成果は PLoS One. 2015; 10(9) に掲載された。尿酸が腎機能障害に与える影響はこれまでにも指摘されていたが、対象者が少ないなどの理由のために、尿酸値についての四分位などのグループ化を用いた解析が多かった。本研究は健診コホートというメリットを生かし、尿酸値 6 mg/dL 以上でリスクになるという具体的な値とリスク上昇を示すことができた。実臨床上も意義の高い結果になったと考える。今後は薬剤や生活指導などの介入による尿酸値の変化が腎機能障害の変動に与える影響について検討をすすめる必要がある。
2: おおむね順調に進展している
慢性腎臓病の発症因子について、疫学的研究から新規の知見がえられた。
今後、健診コホートのデータを用いて、さらに解析をすすめる予定である。具体的にはCKDのその他の因子である蛋白尿の発症などについての検討をすすめる。
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PLOS ONE
巻: 10 ページ: -
10.1371/journal.pone.0137449.