研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)は主に糸球体濾過量と蛋白尿で定義され、本年度はCKDの発症に関連した尿酸の影響について、蛋白尿発症の視点から検討を行った。1998年から2007年の健康診断を受診した一般住民のうち、糸球体濾過量および尿中蛋白がCKDの基準を満たさない症例で、かつ解析に必要な情報のある58,563名を対象とした。平均観察期間は4.4年であった。観察期間中に 2,285名(3.9%)の症例が蛋白尿を発症した。男女ともに尿酸値が高いほど蛋白尿を発症しやすい傾向がみとめられたが、その傾向は女性で顕著であった。コックス比例ハザードモデルを用いた解析の結果、女性においては高尿酸血症は蛋白尿発症の有意なリスク因子であり、特に血清尿酸値が6 mg/dL 以上では、尿酸値4 mg/dL 未満の群と比較して蛋白尿発症のリスクが増大することを確認した。男性においては高尿酸血症と蛋白尿の関連はみられなかった。研究成果については第59回日本腎臓学会学術総会、アメリカ腎臓学会(ASN Kidney Week 2016、シカゴ) およびアジア太平洋腎臓学会 (APCN/ANZSN 2016、パース) にて発表した。 これまで申請者が行った高尿酸血症の検討では、男性では糸球体濾過量に影響することが明らかとなっており、男女で尿酸の影響が異なるという興味深い結果となった。今後は薬剤での介入や病理学的な検討を含めて因果関係や機序を明らかにしていく必要があると思われる。
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