研究課題
本研究は、高速かつ原子分解能で表面構造を観察できる周波数変調原子間力顕微鏡を用いて、結晶成長のプロセスを原子レベルで高速に捉え、成長メカニズムを原子レベルで理解することを目的としている。研究代表者が異動したために、初年度から最終年度途中にかけて、高速周波数変調原子間力顕微鏡を一から立ち上げた。自作の周波数変調原子間力顕微鏡装置をベースに、市販の高速周波数シフト検出器(位相ロックループ回路)を用いるなどして、10nmx10nmサイズの原子像(100点x100点)を1枚あたり2-3秒で取得できるようにした。また最終年度には、フッ化バリウム(111)表面を、未飽和溶液や過飽和溶液など様々な溶液中で観察した。未飽和溶液中では表面が溶解する様子が見られたが、その中でも高いpHでは水酸化物の析出が見られ、低いpHでは水素吸着がみられた。フッ化物イオンを多く含む溶液では、水酸化物の析出が抑制され、ステップエッジからの溶解が見られ、テラスの上では結晶構造を反映した原子像が得られた。また過飽和溶液中では過飽和度によって結晶成長が2次元的もしくは3次元的に起こることがわかった。一方で、準安定形結晶が安定形へと相転移するプロセスを高速周波数変調原子間力顕微鏡で捉えるための基礎的実験として、アセトアミノフェン結晶の安定形・準安定形の原子分解能観察に成功した。今後、これらの結晶表面で高速周波数変調原子間力顕微鏡イメージングを行い、結晶成長メカニズムや相転移現象のダイナミクスを原子レベルで調べていきたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Nanoscale
巻: 8 ページ: 7334-7342
10.1039/C5NR08092D
Journal of Physical Chemistry B
巻: 120 ページ: 1221-1227
10.1021/acs.jpcb.5b11870
Corrosion Science
巻: 105 ページ: 177-182
10.1016/j.corsci.2016.01.015
Physical Review B
巻: 92 ページ: 155412-1-7
10.1103/PhysRevB.92.155412