研究課題/領域番号 |
26870222
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
丹下 正一朗 金沢大学, がん進展制御研究所, 博士研究員 (40571211)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | DNA脱メチル化 |
研究実績の概要 |
細胞のがん化とゲノムDNAのメチル化との関連については膨大な研究の蓄積がある一方で、がん化とDNAの脱メチル化の制御についての研究は未だ十分ではない。申請者のグループでは、DNA脱メチル化の第一段階に関わるTET1酵素の発現が、CpGアイランドメチル化形質(CIMP)陽性の大腸癌細胞株で極端に低いこと、及び、肺癌細胞株に対し上皮間葉転換(EMT)を誘導させる際に発現が上昇することを見いだした。本研究は、CIMP表現型の誘導・成立や癌細胞におけるEMTの進行という諸過程にTET1酵素が果たす役割を解明することを目的として研究を進めている。 本年度は、公共のデータベースThe Cancer Genome Atlas (TCGA)を用いた情報学的解析により、CIMP陽性の大腸癌組織ではCIMP陰性の組織に比べて炎症性サイトカインを介するパスウェイが亢進していることが明らかとした。大腸癌細胞株をこれらのサイトカイン培地中に添加することでTET1のmRNA転写レベルの低下が確認されたほか、TET1遺伝子のプロモーター領域に、転写抑制状態にある遺伝子座に特有のヒストン修飾が誘導された。 TET1を特異的に抑制するshRNA発現ウイルスを感染させた肺癌細胞株では、TGF-βによるEMTの誘導が確認されなかった。この結果は、TET1の主な機能であるDNA脱メチル化を、DNAメチル化酵素阻害剤を投与することで擬似的に回復させる実験を行なった際にも同様であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌細胞株を用いた予備データを補完する結果が、TCGAの大腸癌サンプルを用いた解析から得られたほか、CIMP陽性大腸癌においてTET1遺伝子の転写が抑制される分子機序の一端を明らかにした。以上の結果を専門誌に投稿する段階まで進められたことから、研究は順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、TET1酵素の発現を誘導する分子機序や、TET1酵素依存的に発現が制御される標的遺伝子を解析することで、がん細胞におけるゲノムDNAのメチル化状態の新しい調節機構を明らかにする。TET1ノックダウン細胞とコントロール細胞をTGFβで処理し、各群の細胞から抽出したRNAを用いたトランスクリプトーム解析を行うことでTET1依存的に発現レベルが変化する遺伝子群を同定する。また、標的とされた遺伝子候補のプロモーター領域を中心としたDNAメチル化状態の解析も行い、癌の発症や進行の過程におけるTET1酵素活性の重要性についても評価することを予定する。
|