本研究の目的は、中国農村内部の社会結合をめぐる英国人植民地官僚の認識が、東アジアの英領植民地・租借地の統治政策にいかなる影響を与えたのかを分析することにある。より具体的には、イギリスの租借地であった威海衛、とりわけその都市周辺に広がる後背地の農村に焦点を当てる。 3年目となる本年度は、前年度に引き続きイギリスをはじめとする、各地に所蔵されている関連史料の収集・読解に焦点を置いた。2015年度に実施したイギリスでの史料調査の結果、まず当該研究の目的を達成するためには、イギリスの国立公文書館に所蔵されている史料を体系的に収集し、これらを詳細に分析する必要があることが判明した。このため本年度は昨年度に引き続き、8月に2週間ほどイギリス(ロンドン)に滞在し、史料の調査・収集に取り組んだ。 より具体的には、国立公文書館では①威海衛をその管轄下に置いた植民地省の関連文書、②威海衛同様に東アジアに所在した、香港に関する植民地省の関連文書、③威海衛の統治に関する内閣関係文書、を中心に収集した。またロンドン滞在中には、英国図書館およびロンドン大学東洋・アフリカ研究学院の図書室も訪問し、関連する文献や史料を調査・収集した。 こうしたイギリスにおける史料の調査・収集に加えて、東京大学総合図書館を複数回訪問し、同館に所蔵されているイギリス外交文書の中から、威海衛に関連するものを調査・収集した。 さらに本年度には10月に武漢を訪問し、中国の農村社会研究をめぐる華中師範大学との学術交流に参加した。
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