研究課題/領域番号 |
26870224
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
SVADLENKA KAREL 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60572188)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 界面運動 / 連成モデル / 非対称な接合点 / BMOアルゴリズム / 符号付距離関数 / 自由境界問題 / ペナルティ法 |
研究実績の概要 |
接触角の運動モデルをまずスカラーの場合に考えた上で一般的なベクトル値モデルの解析を始めることが当初の研究計画だったが,26年度は順番を少し変更し,主にベクトル値のモデルに着目した. 特に,液滴の表面と内部流体を連成させたモデルの基本構造を構築し,この連成モデルを数値計算する方法の基礎を確立した.モデルとその数値解法の開発過程で新しい疑問点が現れたため,それらの解決にも集中した. その一つは,界面ネットワークの運動で,それぞれの界面の表面張力が異なるとき,接合点が非対称になり近似として通常のレベルセット法を利用できないため,BMOアルゴリズムを一般化し,異なる表面張力と空間座標に依存するbulkエネルギーに対応できるようにした. もう一つの課題は,BMOアルゴリズムの数値計算において一様な格子を用いたときに界面が停滞してしまう問題である.2相の問題では符号付距離関数の援用によりすでに解決されているが,界面ネットワークの問題ではベクトル値のBMOアルゴリズムとなるため,対策が知られていなかった.そこで,符号付距離関数の概念を拡張したスキームを開発し,その解析を行った. また,本研究の主な目的である曲率による加速度をもつ(双曲型の)界面運動においても進展があり,数値計算のための近似法とその主な解析が完了している.さらに,体積保存条件によりBMOアルゴリズムの過程で現れる自由境界問題の解析を行い,その数値計算においてペナルティ法を用いることが正しいという事実を証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,まず接触角ダイナミックスのスカラーモデルを解析し,その結果を受けて界面ネットワークへの拡張を図る予定だったが,スカラー値モデルとベクトル値モデルをある意味で独立に扱うことができることがわかり,26年度は予定の順番を少し変更して本研究の全体的な目的により近い界面ネットワークの運動解析に着目した. また,研究を進める上で想定しなかった課題が浮上し,それらの疑問点を解決するのにも時間と労力が必要だった. しかし,研究の順番が多少変わり,新しい部分課題が出ても,もとの研究計画で予定していた内容の約1年間分を遂行できたので,研究はおおむね順調に進展していると言ってもよいと思う.
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今後の研究の推進方策 |
27年度は(当初26年度の研究内容と予定されていて現在ですでに進行中の)スカラー値の自由境界問題の解析を続けるとともに,(27年度の研究内容と予定されていたが,26年度にすでに始めた)界面ネットワークの運動のより詳細な解析を進める.両者に対する数値的近似はすでに開発に成功しているので,放物型と双曲型問題の理論的な側面に主に集中し,接触角ダイナミックスの理解につながるフィードバックを行う. また,数値解析においては,粗い表面や科学的に不均一な表面上の液滴の運動の計算を26年度に開発済みのモデルで実行し,ヒステレシスなどの現象の再現とその数学的な解釈を目指す. 申請時の研究計画通り,連成モデルの実装や実験との比較などの実践的な研究は28年度以降の内容とする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の変更に伴い予定していた研究集会に参加できなかったため,少額の残高が生じたが,無理に使用するよりも次年度に繰り越し,必要なときに利用した方がよいと思った.
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次年度使用額の使用計画 |
参加する研究集会を一つ増やし,研究に必要な情報を収集する.
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