研究課題/領域番号 |
26870230
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
長岡 正人 福井大学, テニュアトラック推進本部, 助教 (90397050)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幹細胞 / バイオマテリアル / 接着基質 / 肝細胞分化 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒトiPS細胞の肝細胞への分化過程で発現が変動する細胞表面タンパク質について解析し、新規接着性材料を作製することを目的とする。ヒトiPS細胞は、株によって分化効率が異なる事が知られているため、まずはヒトiPS細胞から肝細胞への分化誘導の条件検討を行った。細胞銀行から分譲されたヒトiPS細胞3株と、新たに作製したヒトiPS細胞3株を用いて、分化誘導条件の最適化を検討した。従来法では、細胞外マトリックスの混合物であるマトリゲルを接着基質として用いるが、分化誘導の過程で細胞の剥離が頻繁に観察された。そこで、安定な分化誘導を実現するために、マトリゲルに代わる新規の接着基質として、細胞外マトリックスタンパク質であるビトロネクチンの一部を用いた組換えタンパク質を作製した。その結果、細胞接着に関わる配列を含む最小単位の組換えタンパク質を用いる事で、安定した分化誘導が可能である事を見いだした。その一方で、全長あるいはN末端とC末端の一部を除いたビトロネクチンでは、分化の過程で細胞が基盤表面から剥離する現象が観察されたため、分化誘導には上記の最小単位の組換えタンパク質が適している事が示された。また、分化誘導初期の増殖因子の組み合わせを検討し、所持しているヒトiPS細胞を最も効率よく分化誘導できる条件を決定した。 細胞表面タンパク質の網羅的な解析と並行して、肝前駆細胞に特異的に発現している2つの細胞接着性タンパク質に着目し、接着基質として作製を開始した。ヒト胎児肝臓mRNAから当該遺伝子をクローニングし、接着基質として用いるために融合タンパク質としての作製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、本研究を進める上で重要である分化誘導の最適化に重点をおき、新規の接着基質の作製と分化誘導への応用について検討した。その結果、安定に分化誘導が可能な条件を見つけることができ、論文投稿準備中である。また、本研究の目的である、細胞表面タンパク質の解析についても、分化した細胞の試料を順次採取しており、本年度は解析と新規接着基質の作製への応用に進む事ができる。さらに、遺伝子発現の解析と並行して、既に報告がある2つのタンパク質について接着基質の開発を開始しており、平成27年度には分化誘導への応用を進める予定である。 以上の観点から、現在までの達成度はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究課題の目的に従い、分化誘導過程で発現が増強する特異的な細胞表面タンパク質と相互作用できる新規接着基質を作製し、ヒトiPS細胞の分化誘導への応用を試みる。
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