pH依存性カリウムチャネルであるKcsAは、ホモテトラマー構造によりチャネルを形成し、酸性条件でイオンの通り道を開く。KcsAの構造は、大きく分けて膜貫通ドメインと細胞質ドメインに分けられる。開閉各状態における膜貫通領域の構造は結晶構造により明らかになっているが、細胞質ドメインの高分解結晶構造は不明である。本研究では、水中・非結晶化状態におけるKcsAチャネルの細胞質ドメインの構造および構造変化の端緒をつかむことを目的とする。 平成26年度は、水中においてはKcsAチャネルの細胞質ドメインは高速に揺らいでおり、KcsAの細胞質ドメインは水中において硬い特定の構造をとらないことを原子間力顕微鏡観察により確認した。 平成27年度は、揺らいでいる細胞質ドメインの4つの末端同士の距離が、チャネルの開閉に際して変化するかどうか検討した。細胞質ドメインの末端を蛍光標識し、開閉各条件での蛍光強度の変化を測定した。比較として、開閉に際して色素間の距離が変化しないと思われる細胞外の部位に標識したものを用いた。結果として、細胞外に標識した蛍光色素は開閉どちらの条件においても蛍光強度は変化しなかったが、細胞質末端では開状態において蛍光強度の増大が確認され、閉状態から開状態へ変化する際に、細胞質ドメイン末端同士の距離が離れることが示唆された。
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