福島原子力発電所の汚染水問題で、トリチウムの分離・回収技術の確立が急務とされており、水素同位体分離は非常に重要な技術である。 種々の水素同位体分離法がある中で、水電解法は分離係数が極めて高いが、電力消費量は大きく、電解法のみによる分離方法では依然として多くの課題がある。本研究では、水電解と燃料電池を組み合わせた新しい省エネルギ-型水電解方を研究した。このプロセスでは、燃料電池を活用し電気エネルギーのリサイクル設計、および燃料電池での同位体分離効果を加えた分離工程の高効率化を目指した。 まず本研究では燃料電池における同位体分離の可能性を検討するため、実際に水素同位体の電極反応に関する電気化学的メカニズムを検討した。そこでは、白金ディスク電極を用いた回転電極を使い、交換電流密度やターフェル勾配を測定した。その結果、燃料電池反応(水素酸化反応)でも同位体効果により水素同位体分離が行える基礎的知見が得られた。 次に、実際に固体高分子形燃料電池(PEFC)を使い、発電状態における重水素同位体分離係数を測定した。その結果、本実験では重水素濃度が10 atomic %の時、重水素同位体分離係数は最大約6.0となり、PEFCでは未利用の生成中に重水素が濃縮されることが分かった。また重水素濃度と分離係数の関係を調べると、重水素濃度が低濃度側にいくにつれて分離係数は2から4前後の値で収束することが分かった。
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