研究課題/領域番号 |
26870236
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
坂井 郁恵 山梨大学, 総合研究部, 助教 (10404815)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | sense of coherence / 家族介護者 / 在宅精神障害者 / 精神看護学 / 家族看護学 |
研究実績の概要 |
本研究は,在宅精神障害者のケアが家族の手に委ねられている現状を踏まえ,家族がもつストレス対処能力(Sense of Coherence:以下SOC)の下位感覚でありSOCやQOLを高める有意味感に着目し,在宅精神障害者の家族介護者の介護に対する有意味感の有無,有意味感の形成や強化に影響を与えた具体的な体験や援助を明らかにする.又,看護師や保健師の家族介護者に対する支援の現状やその援助への認識を明らかにし,地域家族支援を受ける側と行う側双方の状況を把握し,実践可能な有意味感へのアプローチ方法に着眼した家族支援モデルの開発を目的としている. 本研究1年目は,文献検討を重ねるとともに,国内の看護系学会に参加し,訪問看護の現状や精神障害者の家族に対する看護支援の実際に関する情報を収集した.結果,精神科訪問看護は,家族に対しても疾患の理解や社会資源の活用に関する助言を行う等,精神障害者に対してのケアだけでなく家族も含めたケアを実施しており,精神障害者の地域生活を支援する事業として期待されていた.しかし,精神障害者を支援する訪問看護師の抱える困難や訪問看護師による家族支援の内容の検討等の研究は行われているが,家族介護者のもつ力に着目し,SOCや下位感覚の有意味感の強化・向上に着目した支援モデルを検討する研究は行われていないことが明らかになった. また,事前調査として実際に病院看護師や保健所保健師に話を伺い,対象地域で行われている訪問看護の実際を確認した.その結果,対象者としての家族介護者の確保は,訪問看護を行っている看護支援提供者より紹介を受けること,また保健師による訪問看護を保健所保健師は行っていないため,対象者としての保健師は市町村役所やセンターに所属している保健師に対象を絞ることとした.また,これらの成果を踏まえ,フェースシート及び面接ガイドを完成させた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,在宅精神障害者のケアが家族の手に委ねられている現状を踏まえ,家族がもつストレス対処能力(Sense of Coherence:以下SOC)の下位感覚でありSOCやQOLを高める有意味感に着目し,在宅精神障害者の家族介護者の介護に対する有意味感の有無,有意味感の形成や強化に影響を与えた具体的な体験や援助を明らかにする.又,看護師や保健師の家族介護者に対する支援の現状やその援助への認識を明らかにし,地域家族支援を受ける側と行う側双方の状況を把握し,実践可能な有意味感へのアプローチ方法に着眼した家族支援モデルの開発を目的として,家族介護者や看護支援提供者(看護師・保健師)に対する面接調査を実施する予定である. 研究1年目は,訪問看護の現状や精神障害者の家族に対する看護支援の実際に関する情報を収集するとともに,事前調査として実際に病院看護師や保健所保健師に話を伺い,対象地域で行われている訪問看護の実際を確認し,それらの情報を考慮した面接ガイドやフェースシートの作成を行った.また,対象者を対象地区の現状を踏まえたものとすることができた. しかし,実際の面接調査は今年度(研究2年目)から実施するため,具体的な研究データはまだ得られておらず,本研究における研究結果は今後,面接を行っていく中で分析・考察を積み重ねていく.
|
今後の研究の推進方策 |
2年目は,まず,市町村役所やセンター,訪問看護を実施している医療機関に研究協力を依頼し,研究協力施設を確保する.そして,研究参加への同意が得られた精神保健福祉を担当する保健師や訪問看護師に個別面接調査を行い,得られたデータを質的に分析する.次に,研究協力施設の保健師・看護師より対象者となる家族介護者を紹介してもらい,対象者となる家族介護者の確保に尽力する.研究への協力同意の得られた家族介護者に対しては面接調査を実施し,データを質的に分析する. 家族介護者と看護師・保健師の分析結果をもとに,家族介護者の介護に対する有意味感の形成・強化を行う援助モデルの開発を目指す. 研究を遂行する上で,面接対象者の確保が課題となっている.そのため,対象者数の状況によっては,精神科医療施設や他市町村等フィールドを拡大し,対象者の確保に努める.また,対象者に対して,研究の趣旨や倫理面の保障について丁寧に説明し,研究に対する理解が得られるよう努め,対象者を確保できるようにする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では,研究1年目より面接調査を実施する計画を立てていたため,面接調査に協力した対象者に対する謝礼目的の予算を計上していた.しかし,今年度は面接を実施しなかったため謝礼分の予算を使用することがなかった.今年度分の面接を次年度に行うため,その分の予算が次年度使用額となった.
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は,主として対象者に対する面接を実施するため,面接対象者(目標数:60名程度)に対する謝品や,研究データを保管するUSBメモリといった消耗品の購入が必要となる.また,面接に際した研究協力施設や対象者との打ち合わせのための旅費や会議費,通信費等が必要となる. そして,円滑にデータの分析を進めていくためには面接で得られたデータを迅速に逐語録に起こす必要があり,逐語録を作成するためのデータ入力補助者に対する謝礼を計画している.
|