本研究では,先行研究での一つの周波数と一つ入射方向に対し性能の高い光学迷彩構造の設計に対し,不可視化を実現する周波数を広げるための光学迷彩構造のトポロジー最適化の開発とその構造設計を行った. 平成28年度は自由空間内の物体を不可視化する光学クロークに対し,平坦面上の物体を不可視化する光学迷彩であるカーペットクロークの設計も行った.カーペットクロークの構造設計は波動散乱を制御する最適化問題であり,その種類によっては多峰性の強い最適化問題になることが明らかとなった.レベルセット形状表現は誘電体構造の境界を明瞭に与えることができ,境界上での反射散乱を厳密に取り扱うことができる反面,感度に基づいた単点探索では性能の十分でない局所最適化解に陥ることも多く,初期構造の探索に時間を要したが,凸がある場合とない場合の電磁場の差を最小化することでカーペットクロークの設計が可能となり.最終的に良い性能を得ることができた. さらにカーペットクロークについて,複数の周波数において不可視化を実現するためのトポロジー最適化の開発を行った.複数の周波数での性能評価関数の和と幾何的制約項の和を最小化する正則化された目的関数として,最小化することで最適化構造を得ることに成功した.設計された構造に対し,カーペットクロークの性能を評価する目的関数の周波数応答を調べると,複数の周波数において目的関数の改善が確認できた.これらの成果を韓国のソウルで開催された計算系の国際会議であるWCCM/APCOM2016において発表した.
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