研究課題
本研究では、磁性イオン液体をカーボンナノチューブ細孔中に閉じ込めることで非常に高い磁場応答性を示す、機能化ナノカーボン材料『カーボンナノチューブ磁石』の合成を目指し、その磁場応答性機構をXRD及び分子シミュレーションによるミクロな視点から解明することを目的とした。本研究はナノサイズの磁気ヘッドといった超大容量ナノ磁気デバイスの創製や、超電導磁石といった高磁場が必要であったカーボンナノチューブの3次元的な配向制御に対しての低磁場化に直接つながる研究題目である。平成27年度において、(1)カーボンナノチューブ細孔中の磁性イオン液体構造の決定、(2)複合材料の磁場応答性の評価および細孔中での磁性イオン液体の磁場応答機構の解明を行った。(1)については、まず一般的なイオン液体であるEMI-TFSIを試験試薬として用いて研究を行った。X線散乱プロファイルを3次元構造に可視化する解析法である、ハイブリッドリバースモンテカルロシミュレーションを信州大学飯山拓准教授の協力のもと開発し、カーボンナノ細孔でのイオン液体構造の特異性を明らかにした。(国際学会・ポスター発表2件、国内学会・口頭発表2件)現在論文の投稿中である。さらに磁性イオン液体に対する検討も行い、細孔中での磁性イオンの配位構造の特異性ついても検討した。(2)については、SQUID装置を用いることで、EMI-FeCl4が4 Kで示す反強磁性への相転移をカーボンナノチューブ細孔中で示さないことを明らかにした。このことは、ナノ空間での磁性イオン液体の特異性を示唆している。さらに2次元スリット上のナノ空間を有する活性炭素繊維を用いて、磁化率の細孔径依存性および細孔充填率依存性についても検討を行った。また、高い磁場応答性を示す機能化ナノカーボン材料実現のために、磁性イオン液体を導入したナノチューブを膜状にすることも試みている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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