研究課題
T細胞反応性を残し、B細胞反応性(すなわちIgE反応性)を低減させた食品グレードの抗原改変カゼインを用いて経口免疫療法を行い、免疫療法前後の天然型のカゼインに対する閾値を確認する検討を行っている。特に今回は、この経口免疫療法の前後に採血を行って、バイオマーカーの探索を行い、経口免疫療法の成否に関わる因子の特定を目指している。経口免疫療法を受けた人より同意を得て、末梢血単核細胞分画(PBMCs)を用いた抗原刺激後の培養上清を用いて検討をすすめている。今回特にこの抗原(カゼイン)刺激後のPBMCs培養上清中のTGFβの測定を行った。経口免疫療法の進行とともに抗原特異的なT細胞が活性化してくる可能性も考えられたため、カゼイン刺激後の培養上清において、TGFβが時間経過に伴って徐々に上昇して来る可能性も考えられたが、今回の方法では特に上昇は得られなかった。IL-10をはじめとしたその他のサイトカイン、特に抑制性のサイトカインについても含めて今後研究をすすめていく。また、即時型反応と思われるアレルギー症状を呈した症例とその他の症例についての違いを検討する事も重要であると考える。これらの事例について、抗原改変カゼインに対する抗IgE抗体が存在するのか否か、また、存在するとすれば、経口免疫療法の前からあるのか、それとも経口免疫療法中に増強したのかについてを確認するため、IgE western blotの条件設定を開始している。また、これまでのところ、これらの症例について、TGFβの反応については検討を行ったが、即時型反応と思われるアレルギー症状を呈した症例とそれ以外の症例にTGFβの大きな差を認めなかった。これらの検討を進めながら、来年度においてはさらに詳細な検討を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
経口免疫療法に関わる因子として想定されるものを順に検討していく予定であり、TGFβなど一部では結果が出はじめている。また、経口免疫療法中に即時型反応と思われるアレルギー症状を認めた症例について着目する事でどのようなメカニズムが経口免疫療法の成否に関わるのかについての知見が得られると考えたため、その部分について重点的にすすめている。これらの症例についてもサイトカインを中心に、各種のバイオマーカーを検討しているところである。特にこれらの症状が即時型反応と考えられるため、この抗原改変食品に対する抗IgE抗体が存在する可能性が考えられる。従って、その抗原特異的IgE抗体の存在を確認する事と、それが免疫療法の前後で変化するかについても検討をすすめている。今年度は検体の収集を中心に考えており、また、一部の結果が出始めて来ており、概ね順調にすすんでいると考えている。
今後については、カゼインまたは抗原改変カゼインで刺激したPBMCsの培養上清がある程度順調に蓄積できているため、予定どおり網羅的なバイオマーカーのスクリーニングをすすめていく。特にIL-10など抑制性のサイトカインについての結果が重要であると考えられるため、その部分を中心にすすめていく。さらに、経口免疫療法中に即時型反応と思われるアレルギー症状のみられた症例について、IgE抗体の存在する可能性も考えられている。抗IgE抗体の存在の可能性については、着目すべき点であると考えられたので、その部分については、今後も重点的にすすめていく。IgE western blotの条件設定は概ね順調にすすんでいるため、次年度においてはそれを各患者さんの検体において確認していく必要があると考える。また、その他の方法でIgE抗体の存在の可能性が証明できるかどうか検討を進めていく。
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