研究実績の概要 |
T細胞反応性を残し、B細胞反応性(すなわちIgE反応性)を低減させた食品グレードの抗原改変カゼインを用いて経口免疫療法を行い、免疫療法前後の天然型カゼインに対する閾値を確認する検討を行っている。今回は特に、この経口免疫療法の前後に採血を行ってバイオマーカーの探索を行い、経口免疫療法の成否にかかわる因子の特定を目指している。経口免疫療法において、開始前、増量期の後、維持期の最後に採血を行い、PBMCsを天然型のカゼイン(300μg/mL)、PHAで刺激したものと、無刺激の培養上清を回収してサイトカインの産生について測定した。IL-1b, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-10, IL-12(p70), IL-13, TNF-α, GM-CSF, IFN-γを測定した。 経口免疫療法については、13例に実施した上で10例で開始前と比べて増量期ののちに症状誘発閾値が上昇した。また、6例で牛乳の摂取が可能となった。経口免疫療法の経過にしたがって、カゼインの刺激に対する反応としてIL-4, IL-5, IL-13などのTh2を誘導するサイトカインの産生が低下し、代わりにIFN-γなどのサイトカインが上昇、あるいはIL-10などのサイトカインが上昇する可能性を想定していた。多くのサイトカインにおいてそれぞれでは有意な変化を認めなかったものの、IL-4/IL-12(p70)の比をとるとカゼイン刺激において採血ごとに有意に比が低下した。すなわちTh2/Th1バランスがTh1側へシフトする可能性が示唆された。
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