ポリL-乳酸(PLLA)はジメチルホルムアミド(DMF)などのある種の溶媒と複合体結晶を形成する。そのような溶媒中ではPLLAがナノファイバー構造を取ることで溶媒の流動を抑えて、容易にゲル化する。一旦複合体結晶でナノファイバー構造を形成させれば、複合体結晶を形成しない溶媒と交換してもゲル状態を保つことが可能な場合があったが、PLLAと溶媒の親和性はゲルの流動温度と明確な相関がみられず、どのような溶媒で交換可能なのか明らかでなかった。 そこで、一旦DMF中で複合体結晶のナノファイバー構造を形成させた後で、1-プロパノールに浸漬させてPLLAをより安定な結晶形に変化させたの後に、種々の溶媒と交換を試みた。その結果、DMFから直接溶媒交換した場合と異なり、ほとんどの溶媒と交換可能になり、ゲルの流動温度も溶媒とPLLAとの親和性と良い相関がみられた。 また、複合体結晶によって形成させたナノファイバー構造の間に新しい高分子構造を構築させることで、ゲルの流動温度の向上などの物性を制御することを試みた。一旦形成したナノファイバー構造を壊さずに新しい高分子構造を形成させるために、種々の溶媒に対して溶解性が高いポリスチレンとPLLAとのブロック共重合体を用いることで、PLLAのナノファイバー間にブロック共重合体の構造を形成させることに成功した。 ブロック共重合体の凝集構造形成は静的・動的光散乱測定で確認し、ナノファイバー間でのモルフォロジーは走査型電子顕微鏡で観察した。ブロック共重合体の新しい高分子構造を構築させたゲルは、ブロック共重合体を導入する前よりもより高温まで流動しないゲルを作製することができた。
|