研究課題/領域番号 |
26870246
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
樋口 富彦 静岡大学, その他の研究科, 特任助教 (40570510)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | カルサイト / 造礁サンゴ / 温度依存性 / バイオミネラリゼーション |
研究実績の概要 |
炭酸カルシウム骨格を過去の気候変動を読み取る記録計として利用を試みる研究が多いが、アラゴナイトとカルサイトで温度など生成環境に対する応答が違う。本課題では、通常アラゴナイト骨格を生成する現生の造礁サンゴがカルサイト骨格を生成した際、骨格中の元素組成が温度によってどのように変化するのかを調べることを目的とし研究を行っている。 26年度は、沖縄でサンゴAcropora tenuisのプラヌラ幼生を獲得し、静岡に持ち帰り実験を行った。合成ペプチドを用いて、プラヌラ幼生にポリプへの変態を促し、温度制御環境下で純粋な骨格炭酸カルシウム骨格を成長させた。Mg=0の人工海水を作成し、通常の海水と割合を変えて混合することで様々なMg/Ca比の海水を作成した。サンゴに共生藻類を導入後、光が供給できるインキュベーターで温度をコントロールし、約半年間の飼育を行った。結果、温度・Mg/Ca比の違う計9条件下で生成した骨格を得ることができた。得られた炭酸カルシウム骨格をX線回折装置で測定し、骨格の結晶型を確認したところ、Mg/Ca比1.0以下で生成したサンゴの骨格は、水温に関わらず全てカルサイトの骨格が生成した。一方で、成長速度はMg/Ca比が低いほど遅く、現生のサンゴはカルサイト骨格を成長させるのが困難であることが示唆された。またレーザーアブレーション(LA)-ICP-MSで、アラゴナイトおよびカルサイトの炭酸カルシウム骨格中元素測定の検討を行い、それぞれで特異的なデータを得ることができた。同一のサンゴ個体からアラゴナイト・カルサイト両結晶型の骨格元素組成のデータを得た報告例は世界的に見てもない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り実験が行えた。温度管理できるシステムを構築後、サンゴの幼生を入手し、温度管理下で骨格の成長実験が行えた。また、骨格中元素測定法の検討を行い、測定法が概ね決定できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、生成した骨格中元素の解析を行い、水温や骨格結晶型の違いと、骨格中のストロンチウムやマグネシウム、ホウ素など元素の含有量の関係を調べる予定である。また、温帯域の造礁サンゴを用いて、低水温域の骨格形成を試みる。
|