研究実績の概要 |
本研究は,時間制限・情動喚起といったプレッシャーによって生じる高齢者の「焦り」による認知的制御の妨害メカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでの先行研究では「焦り」を喚起する方法として,(1)情動を喚起するようなシナリオを設定する手法,(2)制限時間は無いがタイマーを提示する手法等が示されている。しかし,この 2 つの方法が実際にどの程度,「焦り」を喚起しているのかについては十分な検討がなされていない。また,「焦り」については事前と事後の主観評価の差異を検討することで「焦り」状態にあったことを確認する方法が考えられる。しかし,この方法についても主観評価ベースであり,「焦り」の主観評価となりえるかについては検討されていない。そこで平成26年度は,高齢者における「焦り」状態を反映する客観指標として自律系生理指標とその簡便な計測方法を開発することを主たる目標とした。本年度は目標にもとづき以下の研究を行った。(1)「自律系生理指標」の一つとして心拍変動に注目し,心拍変動の簡易計測が可能なマイコン装置の装置開発,測定プログラムの開発を行うと共に,指標の精度を確認するための装置としてウェアラブル心拍計を導入した。(2)実際の日常場面において「焦り」にともなう認知的制御の機能低下が及ぼす影響についての事例研究を行い,シンポジウム,研究会で発表した。(4)タッチパネル型情報端末(ATM,券売機)のシミュレータを操作時に「焦り」を誘発させ,その際の心拍変動を計測する実験を実施する準備を整え,平成27年度前期に実験を実施することとした。
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