本申請課題の目的は,「植物ポテンシャルを利活用した新しい酵素機能同定法の構築」である。本研究で目指す酵素機能同定法は,「植物に一過的に生合成候補酵素を過剰発現させ,植物自身に蓄積している代謝産物を基質とすることで,植物体内で酵素活性試験を行い,生成された代謝産物を化学分析することにより生合成酵素の機能を解明する。」という手法である。 平成27年度において植物プラットーフォーム (イソペンテニル二リン酸/ジメチルアリルピロリン酸 (IPP/DMAPP) の高蓄積組換えタバコ) の構築に行った。平成28年度は本植物プラットフォームタバコを用いて,チャ (Camellia sinensis)由来のテルペン合成酵素遺伝子とシトクロムP450遺伝子およびP19遺伝子を導入して,一過的に生合成酵素を過剰発現させた。一過的組換えタバコから有機溶媒を用いて代謝産物を抽出し,カラム精製を行い,ガスクロマトグラフ―質量分析装置 (GC-MS) を用いて代謝産物の定性解析を行った。その結果。テルペン合成酵素によって生成されたと揮発性テルペン化合物およびシトクロムP450で水酸化されたテルペンアルコールを検出した。これらの化合物について標準物質を用いて,構造決定を行った。以上より,本研究の目標である植物ポテンシャルを利活用した新しい酵素機能同定法の構築に成功した。また本酵素機能同定法を用いることにより,チャ由来テルペン合成酵素とシトクロムP450酵素の同定を行った。
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