研究課題/領域番号 |
26870254
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
中原 竜治 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任研究員 (60725167)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 出生コホート / 生殖補助医療 / 運動発達 / 言語発達 |
研究実績の概要 |
生殖補助医療(以下,ART)の技術の進歩に伴い,本邦においてもARTの結果として出生する児(以下ART児)は増加傾向にある。近年,ART児における身体的・神経学的発達予後に関する研究が広がりをみせており,小児がんなどの疾患のほか,自閉スペクトラム症(以下,ASD)や注意欠如・多動症(以下,ADHD)との関連が報告されている。しかし,ARTと,乳幼児期における運動や言語などの詳細な発達の様態との関連についても知見は限られている。したがって,ART児の乳幼児期における詳細な神経発達を定量的に明らかにすることは,重要な課題である。本研究では,24ヶ月齢におけるART児および非ART児の各神経発達領域の関連性のプロファイルを検討した。 浜松母と子の出生コホート (HBC-Study) に参加している月齢24ヵ月の子ども(男児497名、女児488名)を対象とした。神経発達をMullen Scales of Early Learning(Mullen,1995)を用いて評価した。MSELは,粗大運動,視覚受容,微細運動,受容言語,表出言語の5領域から構成されている。 ART児(N=81)と非ART児(N=904)ごとに,24ヶ月時のMSELの各領域における合計得点を算出し、5領域のすべての組み合わせについて相関係数を算出したところ、非ART児ではいずれも中等度の正の相関(0.35~0.65)がみられたのに対して,ART児では,5領域間の関連が均一でなく、特に粗大運動と微細運動,粗大運動と受容言語,微細運動と受容言語の相関が低く,相関係数は有意でなかった。すなわち、ART児と非ART児の神経発達のプロファイルは大きく異なっていることが分かった。とくに、ART児のプロファイルは発達性協調運動症児の発達プロファイルと一致していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1000例近い新生児を24ヶ月にわたって追跡することができた。また、欧米で広く使われている小児Composite scaleによって、全ての児を直接評価できた点で、価値あるデータを蓄積できたといえる。 仮説の検証も順調に進んでいる。このほか社会性の評価に基づいたARTの影響を検討することが計画調書に記されている。これについては、すでに18ヶ月までの追跡において「共同注視への反応」「呼名への反応」などによってデータを収集したが、入力が完了していない。しかし、平成27年度早々に完了することが見込まれており、懸念はない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、追跡期間を32ヶ月(2歳8ヶ月)まで延ばし、ART児の運動発達・言語発達の予後をnon-ART児を対照にして検討を続ける。すでに平成26年度より2歳以降の児の追跡と評価に着手しており、順調にデータが集積している。さらに、社会性の評価についてもあらたな評価尺度を用いて、社会適応や社交性という観点から評価を進めることをもくろんでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由とし、謝金にて支払う予定であったデータ入力を担う人員が不足していたことがあげられる。また、購入予定であった統計ソフトが27年度にバージョンが新しくなるため、27年度に購入することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度においては、人員を担保し、収集しているデータの入力を完了させる予定であるため、それらに使用する。加えて、上述した統計ソフトに関しても購入する予定である。
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