研究実績の概要 |
本研究の目的は、生殖補助医療(以下、ARTと略)によって生まれた子どもの神経発達の予後に懸念が寄せられていることから、この問題の究明を目指し、本邦の出生コホートで4歳までの詳細な前方視的追跡を行い、子どもの運動・言語・社会性の発達に影響を与えるか否かを検討することにある。 平成26年度-27年度は、浜松母と子の出生コホート(HBC-Study)の運営を継続しつつ、ARTの神経発達の軌跡を収集した。神経発達の測定には、Mullen Scales of Early Learning(Mullen,1995)を用いて評価をした。分析の手順として、ART児(N=81)と非ART児(N=904)ごとに、生後1,4,6,10,14,18,24,32,40,50ヵ月齢におけるMSELの各領域における合計得点を算出し、5領域のすべての組み合わせについて統計的分析を実施した。結果、5領域のすべての組み合わせについて相関関係を算出したところ、非ART児ではいずれも中程度の相関(0.35~0.65)がみられたのに対し、ART児では、5領域の関係が均一ではなく、相関係数は有意でなかった。 平成28年度は、より細分化した結果を得ることを目的として、ART児を体外受精胚移植(以下、IVF)と卵細胞質内精子注入法(以下、ICSI)に分けて解析を行った。その結果、IVFにより出生をした児においては、18・24ヵ月齢における粗大運動の得点に正の影響を与えていたが、ICSIにより出生をした児においては正の影響が認められなかった。加えて、32ヶ月齢における粗大運動の得点に対しては、IVFにおける正の影響が確認されなかった。 今後も追跡を継続し、ART児が児の発達に与える影響について検討をしていく。
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