裂手裂足症は、出生2万人当たり1人程度の発症率で認められる先天性四肢末端形成異常であり、中央列(第2-4指・趾)欠損によるV字形の裂隙形成を特徴とする。現在までに、少数の患者においてTP63およびWNT10B遺伝子変異や染色体コピー数異常が同定されているが、多くの患者において発症原因は不明である。これに関し、われわれは、現在までに集積した52家系中25家系の裂手裂足症およびその関連疾患を有する患者・家族の解析を終了し、12家系において染色体17p13領域における約200 kbの同一の重複を見出し、さらに、この重複上のBHLHA9が責任遺伝子であるというデータを得ている。本研究では、この先行研究を推進し、裂手裂足症およびその類縁疾患における疾患成立機序の解明、新規治療法の開発、遺伝カウンセリングの向上に貢献すると共に、日本人創始者効果として形成されたと推測される17p13重複の形成機序や伝搬様式の解明を目指す。 最終年度は、Modifierの同定について、重複していない染色体上のBHLHA9が関与する可能性をBHLHA9発現量解析、プロモーター領域の構造解析およびエクソン領域のtag-SNPを用いた関連解析により、全く別の因子が関与する可能性を重複陽性の罹患患者、非罹患保因者、健常者を用いたゲノムワイド関連解析およびエクソーム解析により検討し、さらに、重複内のマイクロサテライト解析およびBHLHA9周辺のtag-SNP解析をもとに検討した。解析した結果、modifierについては同定されなかった。以上の結果からmodifierは環境因子を含め複数存在すると考えられた。
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