研究課題
近年、神経細胞とグリア細胞の間に相互情報伝達機能が存在し、脳機能発現に重要であることが示唆されている。特に、アストロサイトはグリオトランスミッターを放出し神経細胞の制御を行い、また神経突起成長に必要な因子の発現も制御することが報告されている。さらにアストロサイトは、神経活動に依存しない自発的なCaオシレーションも報告されているが、その生理的意義や脳の発達過程における役割など詳細はいまだ解明されていない。本研究は、大脳皮質の発達期におけるアストロサイトの自発的なCaオシレーションを制御するメカニズムと脳発達過程との関係を明らかにすることにある。異なる週齢のマウスより作成した大脳皮質スライス標本でSulforhodamine 101(SR 101)とFluo-4 AMの二重染色を用いアストロサイトからのCaイメージングを行ったところ、週齢の違いによりCaオシレーションが変化することが確認された。この週齢によるアストロサイトCaオシレーションの変化が脳発達にどのような影響を与えるのか、また発達に伴いどのような変化を起こすのか明らかにするため、生後0日(P0)から生後30日(成体 P30)の週齢マウスを用いてCaオシレーションの変化を詳細に調べた。効率的にCaイメージングを行うためGFAPプロモーターにより発現を制御したGCaMP6(カルシウム感受性蛍光タンパク質)の発現ベクターを作製し、子宮内電気穿孔法によりそのベクターを側脳室近傍に存在する前駆細胞へ導入した。産まれてきたマウスで蛍光タンパク質の発現が確認されたマウスの急性脳スライス標本を用い大脳皮質アストロサイトから記録されるCaシグナルの解析を行った。特にCaオシレーションの頻度や周囲のアストロサイトとの同期性、さらに一つ一つのCaシグナルの大きさや形について脳発達段階での特徴があるのか現在解析を行っている。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Science Advances
巻: 2 ページ: 1 - 15
10.1126/sciadv.1501723