Ge1-xSnxはSn組成10%程度で直接遷移化する材料である。直接遷移化により、発受光効率向上や移動度の向上が期待でき、光学・電子デバイス応用が期待される。これらのデバイスへの応用に向けて低欠陥密度Ge1-xSnxが要求されている。これまで、Ge1-xSnx成長中に導入される欠陥により、非ドープで高い正孔キャリア密度が報告されている。また、Ge中のSn-Vの欠陥が安定に形成されることが計算と実験から報告されているが、Ge1-xSnx膜中欠陥について知られていない。 そこで、本研究では低欠陥密度Ge1-xSnx形成に向けて、膜中に形成される欠陥の検出及びその消滅方法の知見を得ることを目的とし研究を行った。 GeへのSnイオン注入実験の結果から、Sn-V複合欠陥に起因する欠陥及び本研究で新たに観測されたミッドギャップ近傍のSn関連欠陥を観測した。更に後処理により、深い準位の欠陥は300℃以上の熱処理で殆ど消滅した。一方、注入ダメージが消滅する500℃熱処理後も浅い準位の欠陥は消滅しない知見を得た。従って、Sn起因の欠陥が浅い準位を形成すると考えられる。 MBE法やMOCVD法を用いて成長させたGe1-xSnx膜からは価電子帯端近傍の非常に浅い準位の欠陥とミッドギャップ付近の欠陥を観測した。その浅い準位の欠陥密度はSnの増加に伴って増加した。この欠陥形成を抑制するため、MBE法で成長中に水素を導入した結果、この浅い準位の欠陥密度の減少に成功した。更に400℃以下の水素及び窒素後熱処理は深い欠陥の消滅に有効であることがわかり、400℃以上の高温熱処理では歪緩和を伴って浅い準位の欠陥密度の増加が観測された。転位は価電子帯端近傍に欠陥準位を形成することが報告されている。従って、成長中の水素の導入及び低温後熱処理が高品質Ge1-xSnx成長に有効であることが分かった。
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