研究課題
電子とホールの束縛状態である励起子(エキシトン)は、半導体中においては光励起により生成し、短寿命の後に電子とホールに再結合することが知られている。一方、理論的には無限の寿命を持ち、基底状態として存在する励起子とそのボーズ凝縮相(エキシトニック絶縁体相)は、絶縁体・金属転移の近傍において発現が予想されているものの、実験的には明らかになっていない。本研究の目的は、硫化サマリウム(SmS)を研究対象に、圧力誘起絶縁体・金属転移近傍に発現しうる、励起子絶縁体相の可能性を実験的に追求することである。本年度は、SPring-8のBL12XUを利用した高圧下共鳴発光分光を行い、SmSの半金属相であるgolden phaseに特に着目し、Smイオン価数の温度・圧力変化の観測に取り組んだ。SmSは常圧においては絶縁体であり、Smイオンの価数は2価である。これに圧力を加えることで絶縁体・金属転移を示す臨界圧力において、およそ2.6価の中間価数状態に一次転移を示すことを明らかにした。また、半金属相において価数の温度依存性を調べたところ、温度の低下と共に価数が減少することを明らかにした。これらの結果は、SmSの絶縁体・金属相転移の発現メカニズム、及び、半金属相の基底状態(4f電子と5dホールがエキシトン的な束縛状態を形成していると示唆されている)においては、価数の不安定性が重要な役割を担っていることを示唆するものである。
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J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 063706
http://doi.org/10.7566/JPSJ.85.063706