研究課題
シロイヌナズナの時計関連転写因子PSEUDO-RESPONSE REGULATOR 5 (PRR5)は、昼すぎから夜半にかけてタンパク質として発現し、ゲノムDNAにて特定の遺伝子の近傍に存在する。我々はクロマチン免疫沈降カップルドシークエンス法により、PRR5の結合する遺伝子座を60個ほど同定した。これらの遺伝子群は、PRR5によって直接的に転写抑制されることも示唆された。このPRR5直接的なターゲットの中には、核内タンパク質をコードする遺伝子があった。この遺伝子とその相同遺伝子は共にPRR5により直接的に制御され、またこの遺伝子群の二重変異体の概日リズムは、長周期化することが分かった。つまりこの遺伝子群は時計調節機構に関わることが見いだされた。しかし、タンパク質の挙動の解析が遅れており、この遺伝子群がどのように時計機構に関わっているかはあまり分かっていない。そこでこの二重変異体の長周期形質を当該遺伝子とFLAGの融合遺伝子の導入によって相補させた。さらにこの相補株をクロマチン免疫沈降に供与し、このFLAG融合タンパク質の特定の染色体領域への結合を解析した。その結果、このFLAG融合タンパク質は、生体内において、PRR5の上流領域に結合することが分かった。さらにこのタンパク質を一過的に発現することで、PRR5の転写活性が上昇することが明らかとなった。すなわちPRR5とこの遺伝子間で直接的な転写フィードバッックがあることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
申請時には明らかとなっていなかった、PRR5のターゲット遺伝子の生化学的な機能が以下の解析により明らかとなったから。(1)局在解析により、この遺伝子の産物は核内に局在することが明らかとなった。(2)機能的であることが証明されたタンパク質を発現する植物を用いたクロマチン免疫沈降実験によって、このタンパク質がPRR5遺伝子の上流領域に結合することが明らかになった。(3)一過的発現系解析により、このタンパク質はPRR5遺伝子の転写活性化因子であることが示唆された。
当該タンパク質の染色体への結合領域を、クロマチン免疫沈降後のサンプルを高速DNAシークエンサーによって同定する。またこの領域近傍に存在する遺伝子の発現パターンを網羅的に解析することにより、当該タンパク質の制御する転写ネットワークシステムを理解する。また得られた遺伝子群の解析を進めることにより、この遺伝子を起点とした多様な生理現象の時間的制御について理解を深める。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 産業財産権 (1件)
Plant Cell Physiol.
巻: 56 ページ: 594-604
10.1093/pcp/pcu181
巻: 56 ページ: 640-649
doi: 10.1093/pcp/pcu214
Plant Signal Behav.
巻: 9 ページ: e28505